宇宙

2024.09.28 13:00

鮮やかにきらめく「宇宙の綿菓子」NASAのハッブル宇宙望遠鏡が撮影

大マゼラン雲内にある発光星雲の複合体「N11」。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影(NASA, ESA, and J. M. Apellaniz (Centro de Astrobiologia (CSIC/INTA Inst. Nac. de Tec. Aero.); Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影したこの画像を見ると、地域のお祭りで売っている屋台の綿菓子が食べたくなるかもしれない。この優美な画像に写っているのは、地球から南天の星座かじき座の方向約16万光年の距離にある、N11星雲だ。NASAは声明の中で、N11を「星々によって泡立つ領域」と描写している。この画像は、天の川銀河(銀河系)に隣接する銀河とそこで作用している宇宙のプロセスを、天文ファンに垣間見せてくれる。

HSTが捉えたN11の画像は、輝きが散りばめられた渦巻く赤い霧のように見える。「約1000光年にわたって無秩序に広がったN11のフィラメント群が、恒星物質を互いに織り交ぜている様子は、まるでキラキラと輝く綿菓子のようだ」とNASAは表現している。「綿で織りなしたようなこのガス雲が、急成長している多数の若い大質量星によって電離されていることにより、星雲全体が鮮やかな赤紫色に見えている」とNASAは続けている。1000光年という距離がどのくらいかを実感するのは難しいが、太陽に次いで地球に最も近い恒星のプロキシマ・ケンタウリまでの距離が約4.2光年であることは、知っておくと役に立つ。要するに、N11は巨大なのだ。

N11星雲が大マゼラン雲内のどこに位置するかを示した画像。中央上から右、下へと枠内を拡大した画像になっている(NASA, ESA, J. M. Apellaniz (Centro de Astrobiologia (CSIC/INTA Inst. Nac. de Tec. Aero.), ESO VMC Survey, and DSS2; Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))

N11星雲が大マゼラン雲内のどこに位置するかを示した画像。中央上から右、下へと枠内を拡大した画像になっている(NASA, ESA, J. M. Apellaniz (Centro de Astrobiologia (CSIC/INTA Inst. Nac. de Tec. Aero.), ESO VMC Survey, and DSS2; Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))

N11は、一群の発光星雲で構成されている。発光星雲は、光を発しているガスと塵(固体微粒子)の雲でできている。N11は、大マゼラン雲(LMC)の中に位置している。 LMCは、太陽系が属する天の川銀河(銀河系)に隣接する矮小銀河だ。伴銀河(衛星銀河)とも呼ばれ、銀河系の周りを回っている。比較的小型の銀河だが、内部では星形成が活発に行われている。科学者は、N11内にある恒星の種類と分布に関する理解を深めるために、HSTを利用している。
次ページ > 運用34年超の古参宇宙望遠鏡もまだ現役

翻訳=河原稔

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事