この夏、ボウチャンシク方面のロシア軍の攻勢は失速し、ウクライナ軍の反撃によって市一帯の前線は徐々に北へ押し上げられていった。その結果、工場に残るロシア軍部隊はますます孤立することになった。
情報総局は残存部隊が疲弊するのを待ったうえで、特殊部隊の複数のチームを工場に突入させた。敷地内に潜入した特殊部隊員たちは部屋ごとに掃討を進めていった。「きわめて複雑」な作戦だったが、成功を収めたと情報総局は総括している。
ウクライナ軍はこの工場を解放することで、ロシア側に支配されている市の北側へ進撃しようとする際に、工場にいる敵部隊がもたらしていた小さな危険を取り除くことができた。また、工場の攻囲や解放は、拡大して2年7カ月たつこの戦争でロシア軍によって何度も残酷な都市包囲をされてきたウクライナ軍にとって、復讐のようなものでもあっただろう。
とはいえ、今回の戦果は戦争の潮目を変えるようなものではない。冬が近づくなか、戦況は依然としてかなり流動的だ。
ウクライナ軍が逆侵攻しているロシア西部クルスク州ではロシア軍が反撃に乗り出す一方、ウクライナ軍は2つ目の軸で攻撃を進めている。ウクライナ東部では、ドネツク州の要衝ポクロウシクに向けてロシア軍がじわじわと前進しているほか、ウクライナ側の難攻不落の要塞として立ちはだかってきた同州ブフレダルでも、頑強なウクライナ陸軍第72独立機械化旅団がロシア軍に包囲されるおそれが出ている。
(forbes.com 原文)