国内

2024.09.13 10:30

10兆円規模のスタートアップ投資を生み出す「日本版イノベーションエコシステム」の未来

日本発のイノベーションエコシステムの確立へ

日本発のイノベーションエコシステムを確立するためには、次の要素が重要になる。

・N対Nのパートナーシップ

少子高齢化、気候変動、経済格差の拡大など、現代社会が直面する課題は、急速に複雑化・多様化している。これらの課題解決には、単一の組織や分野の知見だけでは不十分であり、多様な関係者による協力が不可欠だ。複数の大企業、スタートアップ、政府関係機関、大学、自治体、市民等、イノベーション関係者による多角的な連携の中にこそ解決策がある。

特に日本では人材や技術といったイノベーションに必要なリソースが大企業に集中しているという特徴があるため、大企業とチャレンジ精神を持つスタートアップが強く結びついたエコシステムの構築が必要不可欠となる。

・地域特性に根差した取り組み

シリコンバレーやサンディエゴなど、世界にイノベーションエコシステムの成功事例は複数あるが、どれひとつとっても同じエコシステムは存在しない。「エコシステム(生態系)」という名前のとおり、そこには人々の生活が含まれ、多様な関係者の絶妙なバランスによって成り立っている。世界の成功事例を参考にしつつも、イノベーションエコシステムを作りたい地域の文化や歴史、特性を深く理解し、それに合わせた設計が必要となる。

・グローバルイノベーションエコシステムとの直結

イノベーションエコシステムが世界レベルのスタートアップを生み出すためには、初期段階から海外のイノベーションエコシステムと密接に連携することが不可欠だ。それにより、世界中の先端技術や知見の取り込み、海外投資家や顧客へのアクセス、グローバル市場を視野に入れた事業展開などが可能となる。さらに、多様な文化や考え方に触れることで、日本市場だけに閉じず、革新的なアイデアの創出も期待できる。

国際的な競争環境に早期から身を置くことで、スタートアップもエコシステム自身も成長スピードと適応力が高まり、世界市場で競争力のある取り組みへと発展する可能性が大きく向上するはずだ。

「エコシステム=場」がイノベーションの「源泉」になる

「大企業とスタートアップ」「グローバルと地域」そして「人と技術」を結びつけるエコシステムは、これからの時代における新たなイノベーションの「源泉」となる。このイノベーションエコシステムを構築するためには、包括的なアプローチが必要だ。

そのため、私たちはソーシングやマッチングにとどまることなく、プログラムをともにする国内外のステークホルダーとともにプログラムを作り上げ、実装できる「エコシステム=場」を作ろうとしている。

この「場」から生まれたイノベーションこそが、日本だけでなく世界へと広がっていくものになるはずだ。

連載:SCRUM FOR THE FUTURE
 ─ 次にくるスタートアップ&トレンド
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文・上松真也/渡部優也 編集=安井克至

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