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2024.09.13 10:30

10兆円規模のスタートアップ投資を生み出す「日本版イノベーションエコシステム」の未来

「大企業とスタートアップ」「グローバルと地域」「人と技術」を結びつけるエコシステムは、新たなイノベーションの源泉となる

2022年、日本政府は同年をスタートアップ創出元年とし、スタートアップ育成5か年計画を策定し、向こう5年でスタートアップ投資額を5倍、10兆円規模を目指すとした。その中でスタートアップを生み育てるイノベーションエコシステム創出の必要性が述べられている。

「エコシステム」というとシリコンバレーなど海外のものを想起するが、日本でもイノベーションエコシステム創出に向けた取り組みは過去数十年にわたって取り組まれ続けている。独自の整理となるが、現代に繋がる日本のイノベーションへの取り組みは、大きく3つの時代に分けることができる。

・1990年代〜2010年代前半(イノベーションエコシステム1.0)

この時期、日本企業は主に自前主義によるイノベーションを追求していた。トヨタ自動車に代表されるように、企業内部のリソースを最大限に活用し、独自の技術やプロセスを開発することに注力していた。

しかしながら、次第にグローバル競争の激化や技術革新のスピードが増したことで、この閉鎖的なアプローチの限界が見え始める。そのため2010年代に入ると、大企業主導のオープンイノベーション施策が次々と打ち出されていった。

これらの取り組みは、外部のリソースや知見を積極的に取り入れようとする点で画期的だったが、依然として単体の大企業主導の枠組みにとどまっていた。同時に「オープンイノベーション疲れ」という現象も見られるようになった。成果の不明確さや、大企業とスタートアップの文化的ギャップなどが課題として浮かび上がってきたのだ。

・2010年代後半〜2020年代初頭(イノベーションエコシステム2.0)

続く2010年代の後半になると、日本でもオープンイノベーションの概念がより広く認知されるようになり、大企業がスタートアップとの協業に乗り出した。さらに複数の大企業やスタートアップ、自治体、専門家、政府機関など多くのステークホルダーが参加する、特定のテーマに基づいた「N対N」のオープンイノベーションも登場した。

その結果、自社が保有するアセットの活用や自治体との連携など、実証・実装を行う「場」を持つ者が成功事例をつくる一方、「PoC倒れ」や「ROI重視」など、せっかく生まれたイノベーションの芽が実装されないケースが散見されたのもこの時期のことだ。

スクラムベンチャーズ、スクラムスタジオがオープンイノベーションに取り組み始めたのもこの時期だ

スクラムベンチャーズ、スクラムスタジオがオープンイノベーションに取り組み始めたのもこの時期だ

・2020年代〜(イノベーションエコシステム3.0)

そして、私たちはまた新たな段階にいる。イノベーションエコシステム3.0の現在においては、グローバルと地域を直結し、イノベーションの「場」そのものを創造し、実装することが重要となっている。
次ページ > 「イノベーションエコシステム3.0」時代のアプローチ

文・上松真也/渡部優也 編集=安井克至

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