国内

2024.09.13 10:30

10兆円規模のスタートアップ投資を生み出す「日本版イノベーションエコシステム」の未来

地域の特性とグローバルな視点の組み合わせが独自の価値を生む

現在、私たちが取り組むイノベーションエコシステムの育成において、お手本となる事例が米国にある。サンディエゴのベンチャーアクセラレーター「CONNECT San Diego」と、NFLチームのグリーンベイ・パッカーズとマイクロソフトが2017年に立ち上げた「Titletown Tech」だ。

1985年に設立されたCONNECT San Diego(CONNECT)は、サンディエゴ地域のイノベーションエコシステムを育成するために設立された非営利組織だ。ライフサイエンス分野を中心とした多くの技術シーズや、住みよい温暖な気候といった地域特性を生かし、数十年かけてイノベーションエコシステムの構築に成功した。

CONNECTの特徴的なプログラムの1つが「Springboard Program」と呼ばれるアクセラレーションプログラムだ。これは、アーリーステージのスタートアップに対して、経験豊富なアドバイザーによるメンタリングを提供するプログラムである。また「Cool Companies」というプログラムでは、シリーズAの資金調達を目指す有望なスタートアップを選出し、ベンチャーキャピタルとのマッチングを行っている。こうしたプログラムを通じ、サンディエゴ地域内の起業家、投資家、研究機関、大企業等を結びつけ、地域のスタートアップの成長を包括的に支援している。

CONNECTの成功は、地域に根ざしたイノベーションエコシステムの重要性を示している。彼らの取り組みにより、サンディエゴはライフサイエンス分野のイノベーションエコシステムとして世界的に知られる地域となった。

もう1つの事例であるTitletown Techは、地域経済の発展とイノベーション促進を目的とし、以下3つの機能を持つ。

・Titletown Tech Accelerator(スタートアップの育成)
・TitletownTech Venture Capital Fund(ベンチャーキャピタルファンド)
・Titletown Tech Labs(既存企業のデジタル変革支援)

Titletown Techの特徴も、地域に根ざしたイノベーションを推進している点にある。地域の特性や課題を深く理解し、それに適したソリューションを提供することで、真に価値のあるイノベーションが生まれている。

これらの海外事例は、イノベーションの「場」そのものをリアルに創造することの重要性を示している。地域の特性を活かしつつ、グローバルな視点を持ち込むことで、まったく新しい価値を創造できるはずだ。
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文・上松真也/渡部優也 編集=安井克至

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