明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室では、いくつもの味覚溶液を混合してさまざまな味を再現する「味覚メディア」の研究を行っている。これまでに、口臭を伴わないニンニク、甲殻アレルギーでも食べられるカニクリームコロッケなどを生み出してきた。2023年には、味覚装置「TTTV3」も開発されている。たとえば安いチョコレートドリンクに、解析した高級カカオの味と同じになるよう味覚駅を混合してドリンクに混ぜることで、高級チョコレートドリンクになるという具合だ。
TTTV3は、20の味溶液タンクを持ち、それぞれの溶液を0.02ミリリットル単位で組み合わせて求める味を作り出す。その組み合わせはなんと1那由他(1のあとに0が60個)とおり。味は足し算だけではない。ほかの味をうまく使って目的の味を弱める「引き算」もできる。これにより「プロの料理人よりも細やかな味制御」が可能となり、ワインやカカオなど、産地や品種の違いまで表現できるということだ。しかも、LLMと連携して、料理名を話したり、料理の画像を見せるだけで、AIが味を推定して出力できる。
今回、宮下教授の研究チームは、味だけでなく食感の再現も可能にし、食用油やクリームの再現に成功した。油の食感、粘性、脂質感を水溶性食物繊維のイヌリンで調整し、滑らかさを低強度寒天で調整する。この技術を使い、5種類のブランドのオリーブオイルを表現できる装置「Virtual Oil Generator」を宮下教授と同科3年の小平乙寧氏が開発した。
クリームは、ゲル化や気泡をゼラチンで、粘度をサイリウムで調整して作られる。特定のメーカーのカスタードクリームも再現できるということだ。卵も牛乳も使わないのでアレルギーのある人も食べられる。宮下教授と同科3年の千田知佳氏、奥野達也氏が共同で、味溶液と粉末を混合して攪拌する機能を備えた装置「Virtual Cream Generator」を開発した。
なんとか早期の実用化を切に願う。
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