AI

2024.09.04 13:30

AI競争の果ては人類の破滅か トップ投資家たちの熾烈な争い

イラストレーション=ゾハル・ラザール

AIをめぐる思想的な議論の最前線にいるホフマンやコースラ、アンドリーセンらがそれぞれに取っている立場に、自己利益の原理が大きく作用しているのは確かだ。コースラが初期のオープンAIに切った5000万ドルの小切手の価値は、最終的にはその100倍にもなりうる。コースラはまた、例えばバンガロール拠点のサーバムAI(Sarvam AI)のように、独自のソブリンAIモデル(自国のために開発・運用される主権型AIモデル)を開発する日本やインドの企業にも投資している。ソブリンAIには、中国の影響力に対する防波堤の役割を果たすという付加価値もある。「サーバムAIを立ち上げた理由のひとつはそこにあります。国内にAIエコシステムを構築したかったのです」とサーバムAIのヴィヴェク・ラガヴァンは語る。中国や米国に「依存せずにすむように」。
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ホフマンは、投資会社のグレイロックではなく、自身の財団を通じてオープンAIの非営利組織に投資している。しかし、自身が創業したリンクトインを262億ドルで買収し、自らも取締役も務めるマイクロソフトとも密接なつながりがあり、後者のオープンAIとの深い関係の仲介役として重要な役割を果たした。テックの巨人である同社が2023年1月にオープンAIへの数十億ドル規模の投資を行う数カ月前、ホフマンはアルトマンとマイクロソフトのサティア・ナデラCEOをはじめとする両社の幹部を集め、マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツの自宅で会合を設定しているのだ。
 
猛烈な技術革新が想像を絶する困難な事態をもたらす未来か。過度に慎重な少数のせいで技術革新が抑制され、窒息状態に陥ったテック産業か。どちらの陣営も、他方が描く未来像は現実的な結末ではないと考えている。一方で双方ともに、自分たちの考え方が主流になれば、どちらかの未来を選ぶ必要はなくなると主張する。

誰もが切迫感を抱いている。政策立案者と議論を形成する者だけではなく、力をもたない関係者が取り残されないように考える者も、それは同じだ。AI分野の草分けで、スタンフォード大学の「人間中心のAI研究所」の共同所長を務めるフェイフェイ・リーは、規制による制約が学者や公共部門にとって意味するところを「本当に心配」している。「熱帯雨林のなかでさえ、より多くの花を咲かせるためには、大木もたまには低い部分に日の光が届くようにしなければなりません」と警鐘を鳴らす。
 
ホフマンはもっと楽天的だ。「ゲームは進行中で、私たちはみな、人類にとって正しい結論が出されることを望んでいます」とフォーブスの問いに回答する。「まだ非常に早期の段階にあると思いますし、現時点で政策の正しいあり方がわかっていると考える人間は、自分自身を、あるいは私たちを欺いていると思います」と続ける。「正しい政策が何であるかは、みなで一緒に学んでいかなければなりません」。

文=アレックス・コンラッド 翻訳=木村理恵

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