コースラは米国時間6月19日、トロントで開催されたCollision Conferenceのステージで、「彼女の考え方は合理的ではない」とカーンについて語った。「彼女はビジネスを理解していない。その役割に就くべきではない」と彼は続けた。
現在35歳のカーンは、イェール大学法学部に在学中の2017年に『アマゾンの反トラストのパラドックス(Amazon's Antitrust Paradox)』と題した論文を発表し、アマゾンを筆頭とするハイテク大手を規制すべきだと主張したことで脚光を浴びた。
2021年に発足したバイデン政権でFTCのトップに就任した彼女は、マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの買収を阻止するための提訴や、仮想現実(VR)アプリ開発会社のWithin Unlimitedに対するメタによる買収を阻止するための提訴でも知られている。今年1月、FTCはアルファベット、アマゾン、マイクロソフトなどの投資や提携についての調査を開始し、これらの大手による独占を監視している。
そのため、ハイテク大手が小規模なスタートアップを買収することが難しくなり、コースラのような投資家が利益を得ることが難しくなる。1982年にサン・マイクロシステムズを共同創業したコースラは現在、フォーブスの全米長者番付「フォーブス400」で161位にランクインしている。現在、ベンチャーキャピタル(VC)のコースラ・ベンチャーズを率いる彼は、Instacart(インスタカート)やDoorDash(ドアダッシュ)、Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)などの数多くの企業に投資している。
コースラは、独禁法を含む規制そのものには反対ではないが、行き過ぎていると考えている。「独禁法は、どの国や経済システムにおいても存在すべきものです。しかし、この法律が過剰に執行されることは、経済政策として好ましくありません」と彼は語った。
経済発展には適度な規制が不可欠だとコースラは述べ、欧州諸国が行き過ぎた規制によってあらゆるテクノロジー分野の主導的地位から陥落したことを示唆した。
集中は許容されるべきか
ハイテク大手の独占に対する懸念の背景には、これらの企業の業績の高まりが挙げられる。モーニングスターによると、現在の米国の株式市場は1960年代以降で最も集中が進んでおり、時価総額の上位10社が市場全体の時価総額の約3分の1となり、リターンの約70%を占めている。しかし、コースラは、このレベルの集中は必要なものだと述べている。「今後の20年間、中国と米国は、最高のテクノロジーをめぐる経済戦争に突入することになります。そこで勝つためには、あらゆる手を尽くす必要があります」と彼は主張した。
さらに、最高の人工知能(AI)テクノロジーを実現する上でも、集中が必要だとコースラは語った。「経済学者たちが測定するあらゆる指標において、AIは、大きな豊かさや、大きなGDP成長、大きな生産性の成長をもたらすでしょう」と彼は述べている。
彼の主張が正しいかどうかは、まだ分からない。また、誇張はさておき、法学教授でFTCの委員長を務める人物が非合理的な考え方をするとは考えにくい。
しかし、米国のハイテク業界とそのビジネスを最も効果的かつ公平に前進させる方法については、さまざまな異なる意見が浮上している。
(forbes.com 原文)