北米

2024.08.16 09:30

ハリスとトランプどちらが勝っても中国政策に変化なし、米大統領選

バイデン政権はその後、中国に圧力をかけるための追加措置をとった。先端半導体と、半導体製造装置の中国への販売を禁止し、米国の呼びかけで日本とオランダもこの措置に加わった。また、バイデン政権は米企業による中国技術への投資も禁止した。そして米国内での半導体製造に補助金を出して中国政府の補助金に対抗した。バイデン政権はこの1年で中国製の電気自動車(EV)、バッテリー、EV部品、風力発電や太陽電池などの再生可能エネルギー製品に追加関税をかけた。

今回返り咲きを目指すトランプは、中国への圧力をさらに強める気配を見せている。中国で製造されたすべての商品に一律60%の関税をかけ、中国が2000年以来享受してきた最恵国待遇の「恒久的通常貿易関係」を破棄することをすでに提案している。また、消費財やエネルギー、さらにはそれほど微妙ではないテック分野での個別協定に前向きではあるが、テック面では中国との完全なデカップリング(切り離し)を提案している。大統領だった時と同様、トランプは同盟や多国間主義よりも二国間協定を好む傾向にある。

ハリスは貿易面でバイデン政権が進めてきたのと同じ敵対的な姿勢をとる用意があるようだ。だがハリスの戦術はトランプのものとはかなり異なるだろう。例えば、ハリスは「デカップリング」という言葉はあえて使わず、欧州が好む「デリスキング(リスク低減)」という言葉を用いているが、2つのアプローチの実際的な違いがどこにあるのか、正確には不明だ。それでも、より曖昧な表現を用いることでハリスには柔軟性があり、これこそが欧州がこの言葉を好んで使っている理由であることは間違いない。

ハリスはまた、トランプが拒否した多国間主義を受け入れる姿勢を見せている。ハリスは、中国政府の「一帯一路」構想に対抗するため、主要7カ国(G7)で世界的な共同インフラプロジェクトを推進するバイデンを支持した。同様にハリスは、日本、韓国、台湾、米国で半導体サプライチェーンを構築する、いわゆる「チップ4同盟」にも賛同しているようだ。ハリスが大統領になった場合にこれらの方針から離れる可能性もあるが、そのような兆候は今のところない。

トランプとハリスの戦術やレトリック、スタイルは異なるが、2人は基本的な姿勢、つまり中国政府に対して疑念を持ち、中国の貿易慣行や野心に反対しているのは同じのように見える。特に、米国の現連邦議会は中国の貿易と投資に対して敵意を示しており、次の議会も同様に厳しい姿勢で臨む可能性が高いため、この分野では11月の大統領選でどちらが勝つかはほとんど問題ではなさそうだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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