宇宙

2024.08.08 10:30

月・静かの海に巨大な「地下空洞」が存在 将来の基地建設の可能性も

NASAの探査機ルナー・リコネッサンス・オービター(LRO)が撮影した、静かの海の縦穴。高い位置にある太陽に照らされた床面にある巨岩が見えている(NASA/Goddard/Arizona State University)

NASAの探査機ルナー・リコネッサンス・オービター(LRO)が撮影した、静かの海の縦穴。高い位置にある太陽に照らされた床面にある巨岩が見えている(NASA/Goddard/Arizona State University)

NASAの月周回探査機ルナー・リコネッサンス・オービター(LRO)が収集したレーダー観測データの分析により、月面で知られる最も深い洞窟の可能性があると考えられる地下空洞の存在が明らかになった。この空洞には、直径約100mの「天窓」のような入口がある。

将来の月面基地建設の候補地となる可能性があるこの空洞は、月面の平原「静かの海」に位置している。55年前の1969年7月21日に初めて人類を月面に到達させたアポロ11号の着陸地点の近くだ。

NASAの探査機ガリレオが木星に向かう途中の1992年12月7日に撮影した月。暗色の領域は月の平原で、画像左端に「嵐の大洋」、中央やや右に「静かの海」が写っている(NASA/JPL/USGS)

NASAの探査機ガリレオが木星に向かう途中の1992年12月7日に撮影した月。暗色の領域は月の平原で、画像左端に「嵐の大洋」、中央やや右に「静かの海」が写っている(NASA/JPL/USGS)

天井の崩壊

専門誌Nature Astronomyに掲載された論文では、イタリア・トレント大学などの研究チームが、静かの海の縦穴に関する詳細について報告している。月には、このような穴が約200個存在する。月面の縦穴は、洞窟や溶岩チューブ(溶岩洞)に通じる入口となる開口部の可能性がある。溶岩チューブは、地下の溶岩流が流れ出して空洞ができる場合に形成される。縦穴は、溶岩チューブの天井の一部が崩壊する際にできると考えられている。このようにして内部が直接露出している穴は、天窓と呼ばれる。月面にある穴200個のうち、16個ほどが溶岩チューブに通じているとみられている。

知られている最も深い穴

今後解明すべき点は、静かの海の縦穴から通じる洞窟や溶岩チューブが正確にどれくらいの大きさがあるかだ。これまでに知られている最も深い縦穴のように見え、垂直の壁や張り出した壁と、傾斜した床面を持っている。研究チームの推定によると、穴の深さは約130~170m、地下部分の長さが約30~80mで幅約45m。穴から地下空洞への到達は可能と考えられている。

月の穴の実態解明を可能にするかもしれないのが、欧州の探査プロジェクト「ルナーリーパー(LunarLeaper)」だ。跳躍で移動するロボットを天窓に到達させ、内部がどうなっているかを観察する初めての機会を科学者に提供する。これもLROによって発見された、嵐の大洋の西部にあるマリウスの丘に位置する縦穴を調査対象とするこのプロジェクトは、洞窟もしくは溶岩チューブの天井が崩壊した原因の究明と、大型の探査車や宇宙飛行士によるさらなる調査が可能かどうかの解明を試みる予定だ。

NASAの探査機ルナー・リコネッサンス・オービター(LRO)が3回にわたって撮影したマリウスの丘の縦穴。深さが約34m、縦横65m×90mの大きさがある(NASA/GSFC/Arizona State University)

NASAの探査機ルナー・リコネッサンス・オービター(LRO)が3回にわたって撮影したマリウスの丘の縦穴。深さが約34m、縦横65m×90mの大きさがある(NASA/GSFC/Arizona State University)

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翻訳=河原稔

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