2019年に会社を立ち上げたギルは、自身で北カリフォルニア周辺の自然食品店にサンプルを配りに向かった。パンデミックの最中に、彼が妻と3人の幼い娘と住む家はバーチャンズの出荷センターとなった。
会社が収益を上げ始めると、ギルはそれをフェイスブック広告に再投資し、さらに多くの資金を投入するためにローンを組み、収益の50%をその支払いに充てた。自宅を担保にした10万ドル(約1500万円)の借り入れも行った。
その結果、バーチャンズはアマゾンで売上ナンバーワンのバーベキューソースに急成長した。そして、同社のソースは、ホールフーズの60店舗でも販売されるようになり、カテゴリでトップの売上を記録した。「彼らのソースが売れる理由は、アメリカの伝統に深く根ざしながらも、全く新しいテイストを加えたことにあると思います」とホールフーズの担当者は述べている。
日系アメリカ人を象徴するブランドに
2021年になるとギルは、バーチャンズが外部からの資金を一切入れずにアマゾンで売上ナンバーワンのバーベキューソースの売り手になったことに気づいた投資会社のPrelude Growth Partnersから400万ドル(約5億8000万円)を調達した。そして2022年に黒字化を果たした同社は、さらに1300万ドル(約20億円)をSonoma Brands Capitalから調達した。「彼らは、次のシラチャーソースを目指せると考えたのです」と、Sonoma Brands Capital創業者のジョン・セバスチャニは述べている。1970年代にベトナムから米国に渡ったデイビッド・トランが創業した雄鶏のロゴでおなじみのシラチャソースは、市場規模が15億ドル(約2194億円)のホットソース市場で、タバスコやFrank's RedHotに次ぐ3位のブランドとなり、トランは全米で唯一のホットソースのビリオネアとなっている。
バーチャンズはその後、全米最大の小売業者であるウォルマートの店舗にも進出した。「彼らのソースは、この市場に火をつけ、他の企業にもインスピレーションを与えた」とウォルマートのマーケティングディレクターのデイモン・キースは述べている。
バーチャンズのソースは、今では全米の2万5000店舗で販売されており、ギルはさらに多くの顧客にリーチしたいと考えている。彼はまた、ディップソースなどの市場にも進出して、さらなる成長を目指している。
「私たちは米国で最初の日系アメリカ人を象徴する食品ブランドになりたいのです。そして、ハインツやタバスコのようになりたいのです。米国のあらゆる店にバーチャンズが置かれるようにして、私たちの家族の歴史を伝えていきたいのです」とギルは語った。
(forbes.com 原文)