つまり、インドネシアにとって、最初は順調だった中国との提携は一転、問題になっている。ニッケル鉱山の閉鎖が広がっている隣国オーストラリアとは摩擦を引き起こし、中国が支配する原材料に全面依存しないようにする取り組みを急ぐ米国では懸念を招いている。米国は、重要鉱物についてはオーストラリアやカナダといった緊密な同盟国から調達したい考えだ。
ニッケルをめぐる問題は、レアアース(希土類)で起こったことと通じるところがある。レアアースは民生用途だけでなく軍事用途にも使われるものがあるため、ニッケル以上に慎重な対処が求められる金属だが、中国によってほぼ支配されている。
中国企業の出資制限を検討
インドネシアからの報道によると、インドネシアのニッケル産業に関して、IRAの税制優遇を享受できず米国市場をライバル勢に明け渡し、顧客を中国にほぼ全面依存することになりかねないとの認識が広がってきている。そのため、インドネシアではニッケル産業の再編計画も検討されているもようだ。IRAの税制優遇の適用対象となるように、関連企業に対する中国の出資比率を25%未満にとどめることなどが計画されている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、中国側の出資比率が25%未満となるニッケル製錬所の建設について複数の出資候補者と交渉が進められているという。
インドネシア海事・投資担当調整省のセプティアン・ハリオ・セト次官はFTに、再編計画はたんにIRAへの対応だけが目的ではなく、「分散化」を目指すものだと説明し、こう続けている。
「これは非常に重要な政策です。われわれは地政学的な緊張に巻き込まれたくないからです。国益を追求しなくてはいけません」
とはいえ、インドネシアは重要な金属の供給をめぐって米国にすり寄ろうとすれば、中国との関係を危うくする可能性がある。中国企業は出資制限に抵抗することが予想される。
(forbes.com 原文)