この若者は、ちょっとした天才(Prodigy)だ!
国際スポーツクライミング連盟(IFSC)のYouTubeでの実況中継では、スポーツクライミング解説者のグルーム氏がレギュラーでコメントを行い、その都度異なる解説者が参加して掛け合いを行っている。
© Jan Virt / IFSC
安楽選手が初めてリードで優勝したワールドカップ・ブリアンソン大会の中継での、女性解説者とのやり取りを見てみよう。
[女性解説者] He is a person that is so fluent in dynamic moves, like, he flashes so many difficult coordination moves like tricky things that some people or I or others need to project for day two three, he comes like warm up, flashes it. He is incredibly skilled, it's such a good sense of coordination, really impressive.
(彼はダイナミックな動きでスムーズに動ける。他の人や自分だったら1日どころか2、3日練習してやっとマスターできるようなきわどい動きなど難しいコンビネーションでも、ちょっとウォームアップしたら、すぐに((登り方が))ひらめいてものにしてしまう。彼にはとてつもない技術があり、コーディネーションのセンスが良くて、本当に素晴らしい。)
[グルーム氏] Doing his flowy thing at the moment, it’s beautiful to see.. (中略)Calling him with a nickname which is Sticky Sorato, so I’m going to say it again that is a sticky move with that so from Sorato.
(彼は今流れるように動いていて、美しい。((中略))スティッキーSoratoというニックネームで彼のことは呼んでいるんだけど、繰り返して言うよ、今の安楽選手がやったのはまさに「スティッキーな((壁にひっつくような))動き」だよ。)
[女性解説者] Totally.
(間違いない。)
グルーム氏は、継続的に安楽選手をこのあだ名で呼んでいる。たとえば、安楽選手が優勝してただ一人完登した中国の呉江大会のリード決勝でも、「
sticky Sorato it’s his nickname(スティッキーSorato、ニックネーム通りだ)」というコメントを残している。
© Lena Drapella/IFSC
英語のあだ名は「スティッキーSorato」だが、
安楽選手本人は自分のことを「脱力(系)クライマー」と表現している。これまでのトップ選手の多くが力を使ったクライミングスタイルだったのに対して、力を使わずに登るのがうまいスタイルだという。脱力登りという新しい登り方により、これまでになかったレベルで壁に対する「スティッキネス(くっついている状態)」が生まれているのかもしれない。
また、英語の実況においては、Stickiness/Stickyのほか、「Prodigy(神童、奇才、天才)」という英単語も安楽選手を指して何度も使われている。「
This young man is a bit of a prodigy.(この若者はちょっとした天才だ。)」といった具合だ。
日本と違うあだ名で英語の実況では呼ばれている件について安楽選手に聞いてみると、このあだ名については「知っていて」、「面白い表現だな」と思ったという。