技術を尖らせるより、使ってもらえるロボットをつくる
ソニーが初めてのマイクロサージャリー支援ロボットを試作する中で、開発に携わった宮本氏たちは「ある壁」を乗り越えた。「研究開発者には、先端の技術をロボットに載せてどこまで優れた性能が実現できるのかという発想が求められますし、実際に私たちも興味があります。技術志向による開発をしてきたことも過去にはありましたが、ある時にその結果として到達できる視点は低く狭いことにも気づかされました」
「マイクロサージャリー支援ロボットも、尖った先端技術を詰め込むというよりは、実際に使っていただけるロボットとは何かを突き詰めるところが研究開発の起点になっています。例えば力覚をフィードバックするためには、ロボットにモーターを搭載する必要があります。ところがそれによってロボットの構造が複雑になったり、大きく、重くなって操作性が損なわれてしまえば本末転倒です。精密な動作ができ、なおかつ小型軽量なロボットを試作できたことが今回の大きな成果であると自負しています」(宮本氏)
今回試作したロボットを5月の展示会で披露した直後から、ソニーには多くの反響が寄せられているという。まずは先端医療分野への展開が期待されるところだが、医療機器としての認証を受ける必要がある。また用途に応じて、ロボットの大きさや形状についてもよりシビアな最適化が求められる。
見上氏は「このロボットを試作する段階で、医療に携わる多くの関係者のみなさんに知見を共有いただいたことが大きな糧になった」と振り返る。
宮本氏も「ソニーグループの研究開発組織では、ロボットが人と同じ空間で協調して動作しながら、人を支援するロボットに注目してきました。そういった中で、今回試作したロボットは人の能力をサポートしながら、器用さを強調することを目指してきた」としながら、医療の領域において、医師や医療従事者の能力を拡張するこのロボット技術が必要とされるのであれば、今後も貢献できる道を探りたいと結んだ。
ソニーの医療に関わる先端技術には、今後も注目と期待が集まりそうだ。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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