感度の高いデバイスで操縦者による手先の動きを捉え、「マイクロ鉗子」という手術器具が人の手や指先に代わってスケールダウンした動作を正確に再現する。このマイクロ鉗子も医療従事者の声を集めながらソニーが自社で設計したものだ。なお、従来の手術支援ロボットでは器具を手動で交換する時間が必要だった。ソニーが試作したロボットは小型化した手術器具の自動交換にも対応している。
医師の負担軽減、高度医療の普及促進を図る
マイクロサージャリー支援ロボットの研究開発が目指すところをソニーの見上氏に聞いた。「医療分野では医師の不足や負担の増加が深刻になりつつあります。加えて、微小外科手術のように高度なスキルが求められる医療に携わるために、医師は厳しい修練を積まなければなりません。さらに一度習得した技術が衰えないよう、医師にとっては日ごろからのトレーニングも欠かせません。つまり医師に大きな負担がかかります。ロボットによる支援を導入して、医師の負担を軽減することと、同時に高度医療の普及促進を図ることを私たちは研究開発の目標としています」
2024年2月には、愛知医科大学でソニーが試作した外科手術支援ロボットを用いた実験が行われた。実験では微小外科手術を専門としない医師および医療従事者が、ソニーが試作したロボットにより直径約0.6ミリの動物の血管を吻合(ふんごう:血管や神経など管状の器官を手術によりつなぐ)することに成功したという。
ソニーがYouTubeに開設する公式チャンネル「Sony - Technology」には、マイクロサージャリー支援ロボットの試作機がトウモロコシの粒を縫合するデモンストレーション動画が公開されている。