EUで活動する企業には、製品の材料の全履歴をデジタルアーカイブするデジタル・プロダクト・パスポートの導入が義務付けられるが、適応するための実証実験の準備も順調だ。
SAIB創業家の3代目、クララ・コンティCEOは「サステナビリティなど話題にもならなかった60年代初頭、創業者の機転から始まったわが社にとってサステナビリティはDNA」と語る。名門ボッコーニ大学で経営学を学び、戦略コンサルタントを経て家業に入った彼女の突進力に期待がかかる。
言うまでもなく、完成品メーカーも循環経済社会にあう素材にこだわる。木材の履歴をすべて把握しているのは一貫生産の方針をとる日本のカリモクだ。
同社は18年から、単品販売だけでなく住居や商業空間を設計・施工する「カリモクケース」を展開。木製の窓枠までもオーダーメイドで設計している。「自然を感じる心地よい空間とサステナビリティ戦略の両輪の成立を勘案すると、必然的に空間全体を相手にする形態を目指すことになった」と同社の加藤洋副社長。
こうしたワンストップ商売は、顧客にとっては多くの供給先と取引する煩わしさを省き、設計・施工する側にとっては提案の実現度を上げるメリットがある一方、利益を自在にコントロールしやすいため、第三者からは「儲けのための一方便」としてとらえられがちだ。
しかし、ミラノサローネ主催の昼食会で、隣の席にいたジャーナリストは、「家具付きで家を販売しているカリモクケースに注目している」と言っていた。その理解は正しいとは言い難いが、利益の最大化が前面に出ていないからこそ生まれた良い誤解と言えるだろう。