会場ではまず、音とカラーが連動して変わる空間にしばし滞在し、「耳で聴ける色」や「目で見られる音」という次元に入り込む。次の部屋に移動すると、さまざまな色で手のひらサイズの石のような固体が並んでいる。それらに手で触り、カラーが想像させる感触と実際の感触に違いがあるのか、ないのかを体験。3番目の部屋では香りとカラー、4番目の部屋では味覚とカラーの関係を探る。そして最後の部屋に行くと、料理が並んだ食卓の一部にグーグルの電子デバイスが置かれている。
色は表層的あるいは装飾的なものとして見られがちだが、カステッリの元でも働いたカラーリサーチャーのフランチェスカ・ヴァランは「色はコンセプトを構成する重要な要素、かつ主観的なものである」と話す。同じ色でも、人によって、環境によってとらえ方は異なる。実は奥深く、正解はない。それを腹落ちさせてくれた展示は、同社のデザイン戦略の一環でもあり、今後の開発に生かされていく。
「素材」に近いほど創造が広がる
デザイナーの才能や表現が存分に発揮されるためには、素材メーカーの存在が欠かせない。メンフィスの表現を豊かにしたのも表層材メーカーだった。ここで、出展はしていなかったが興味深い企業をひとつ取り上げたい。パーティクルボードメーカーのSAIB EGGERグループだ。1962年、イタリアに生まれたSAIBが2年前、同分野では世界大手のEGGER(オーストリア)に買収され改称した。