サイエンス

2024.08.05 16:00

1894年、孤島に連れてこられた1匹の飼い猫 翌年には1鳥種が絶滅

Getty Images

ネコのティブルスの目に止まった獲物は一風変わった鳥だった。他の場所で見つかったことはなく、当時、鳥類学者の間でもまったく知られていない種だ。ティブルスはその鳥たちを、時には食べかけで、時には無傷のまま、主人の灯台守ライアルに「プレゼント」として持ち帰った。ライアルは無傷の標本を素人ながらもはく製にし、当時、著名だった鳥類学者たちのところへ持ち込んだ。H.H.トラバースはその1人だ。
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この鳥は後にスチーフンイワサザイ(学名Traversia lyalli)と命名され、いくつか独特の特性を示した。鳥よりもネズミに似ており、倒木の周りや岩石の下を走り回り、隠れて生活した。時には夜行性になり、その大きな足と短い尾は飛ぶことよりも深いやぶの中を進むために用いられ、この島の環境によく順応していた。豊富な食料のためか、それとも捕食者が不在だったためか、この鳥が飛ぶように進化することはなかった。この点で非常にユニークで、飛べない鳴禽類(めいきんるい)の数少ない種の1つだった。
スチーフンイワサザイのイラスト(JOHN GERRARD KEULEMANS, PUBLIC DOMAIN, VIA WIKIMEDIA COMMONS)

スチーフンイワサザイ(JOHN GERRARD KEULEMANS, PUBLIC DOMAIN, VIA WIKIMEDIA COMMONS)

その結果、鳥たちは、1894年にライアル一家が移住してほどなく間もなく、スティーブンズ島で野生化したティブルスとその子猫たちの格好の餌食となった。

飼い猫と野生化した子ネコたちが脆弱な生態系を破壊

ネコのティブルスたちがやってくるまで、スチーフンイワサザイは捕食者のいない環境に順応していた。飛べないことから、彼らは迅速さと偽装によって危険を避けていた。しかし、そのような順応はティブルスと子ネコたちのような捕食動物には通用しなかった。

繁殖効率が高いネコは、1年に複数回、子ネコを数匹ずつ産むことがある。ティブルスは最大8匹の子を産んだ可能性があり、それぞれがわずか4カ月のうちに繁殖能力を持った。この高速な繁殖サイクルは、天敵がおらず、自然による抑制や均衡に妨げられることもなかったことから、個体数の急増につながった。

野生化したネコたちが倍増するにつれ、島の脆弱な生態系バランスへの影響も大きくなった。子ネコは急速に成長し、野生で狩猟して生き残ることを学び、磨かれたスキルは、スチーフンイワサザイのような在来種に対して破滅的な効果があった。
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