売り手と買い手の関係が「上下」から「横」に──
メルカリが登場した時、スマートフォンの普及率は25%だった。韓国やアメリカの半分以下の普及率である。11年が経った今、携帯電話所有者のスマートフォン比率という調査(NTTドコモモバイル社会研究所)によると、普及率は97%。スマホというツールの登場により、CtoC取引は当たり前になった。
「スマホ革命の波をいち早く捉えてビジネス化したスピード感にわくわくする」と、起業家ランキングの審査員に評されたメルカリだが、のちに社長になる小泉文明氏は私にこう言っていた。
「売り手と買い手の関係が上下から横に変わり、モノとお金がフラットに流通していく。しかも、スマホなど端末をもつ世界のすべての人に広がります。その売買は昔に逆戻りしたようにプリミティブで、雨が降ったら軒先を貸す、シェアに近いものなのです」
古典落語に出てくる長屋のような風景が目に浮かび、逆に新鮮に思えた。そして、当時こうタイトルをつけたのだった。
人間の「買う」という概念が変わる。
──「買う」「食べる」など人間の行為の「動詞」が、技術や仕組みと掛け算された時、新しいビジネスが産声を上げると私は思っている。Forbes JAPAN創刊10年目の今、あの時のメモ帳を見ながら、その「産声」が上がるシーンを振り返ってみたい。