経営・戦略

2024.08.08 09:15

人はメルカリ登場をなぜ喜んだか? 編集長10年取材録#1 (2015)

売り手と買い手の関係が「上下」から「横」に──


メルカリが登場した時、スマートフォンの普及率は25%だった。韓国やアメリカの半分以下の普及率である。11年が経った今、携帯電話所有者のスマートフォン比率という調査(NTTドコモモバイル社会研究所)によると、普及率は97%。スマホというツールの登場により、CtoC取引は当たり前になった。

「スマホ革命の波をいち早く捉えてビジネス化したスピード感にわくわくする」と、起業家ランキングの審査員に評されたメルカリだが、のちに社長になる小泉文明氏は私にこう言っていた。

「売り手と買い手の関係が上下から横に変わり、モノとお金がフラットに流通していく。しかも、スマホなど端末をもつ世界のすべての人に広がります。その売買は昔に逆戻りしたようにプリミティブで、雨が降ったら軒先を貸す、シェアに近いものなのです」

古典落語に出てくる長屋のような風景が目に浮かび、逆に新鮮に思えた。そして、当時こうタイトルをつけたのだった。

人間の「買う」という概念が変わる。

──「買う」「食べる」など人間の行為の「動詞」が、技術や仕組みと掛け算された時、新しいビジネスが産声を上げると私は思っている。Forbes JAPAN創刊10年目の今、あの時のメモ帳を見ながら、その「産声」が上がるシーンを振り返ってみたい。

ForbesJapan 創刊10周年特別記念号「次のインパクトはこれだ」2024年8月号

文=藤吉雅春 編集=石井節子

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