“失われた30年”を乗り越えた日本企業の「中から変わる力」

阿部修平 スパークス・アセット・マネジメント株式会社代表

阿部修平 スパークス・アセット・マネジメント株式会社代表

投資家の目とは何か──。「投資の巨人」ウォーレン・バフェットとジョージ・ソロスの薫陶を受けた阿部修平(投信投資顧問会社 スパークス・アセット・マネジメント株式会社代表)が、その哲学を語り尽くすシリーズ連載、第4回。今回は日本企業の美点「中から変わる力」と、その源泉についての考察。


元日銀総裁が指摘する“失われた30年の本質”


 藤吉:先日、取材で元日銀総裁の黒田東彦さんにお会いしたんです。印象的だったのは「自分が総裁になった時点(2013年)で、日本ではデフレが十数年続いていた。

“失われた30年”の萌芽は1980年代に既にあったと思う」という趣旨のことを仰ったんですね。この感覚は前回(https://forbesjapan.com/articles/detail/71768)、阿部さんとお話した「周期」説に通じるものがありますよね。

阿部:まさに日本の経済活動の「消長と波」のド真ん中におられた人ですからね。

藤吉:黒田さんは、「産業革命以降、デフレがこれだけ長く続いた国というのは歴史上、ありません」という言い方もされてました。〝黒田バズーカ〟(異次元の金融緩和政策)にしても「異常な事態に対しては、異常な政策で対応するしかなかった」と。

阿部:私も同じ意見です。そういう意味では、まさに「異常値」なんですよ。

藤吉:今日は「今の日本企業をどう見るのか」というテーマでお話をうかがいたいのですが、その前段として、黒田さんも指摘する〝失われた30年〟問題の本質を押さえておいたほうがいいな、と思うんです。

阿部:確かに。この異常な30年を日本企業がどうやって生き延びたのかというのは、実はすごく面白いポイントです。

日本の凋落と中国の台頭

阿部:で、この30年で世界がどう変わったのかを見るには、これが一番わかりやすい。

藤吉:このグラフは連載第2回でも出てきましたね。


※欧州は、ドイツ、英国、フランス、イタリア 。表示桁未満の数値がある場合、四捨五入しているため、合計が100.0%にならない場合があります。 出所: 国際通貨基金(IMF)、スパークス・アセット・マネジメント 

阿部:僕は暇さえあれば、このグラフを見て、色々とストーリーを考えるのが好きなんです(笑)。これを見て、まず特筆すべきことは、日本の相対的地位の没落です。

1989年──これはスパークスの創業年でもありますが──には世界全体のGDPに対して、日本のGDPは14%を占めていたのが、2022年にはたった4%まで下がっている。成長率の平均に至っては0.9%という異常な低さです。

特筆すべきことの第2点は、没落する日本と入れ替わるような中国の台頭です。僕が創業した当時、全世界のGDPに占める中国の割合はわずか2%で、投資家としては視野にも入っていなかった。それが2022年には全世界のGDPの18%を占めるに至りました。成長率の平均は年率で12.7%。これまた異常に高い数値で、それこそ「周期」説でいえば、維持できるはずがないんです。

藤吉:実際、中国はコロナ禍以降、明らかに失速していますよね。
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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波をつかむ12の方法 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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