映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、なぜNASAの全面的協力を得られたのか?

プロデューサーの1人、ジョナサン・リアは次のように語る。

「偽の月面着陸を描く映画で、ケネディ宇宙センターでの撮影許可を求めても、完全に時間の無駄だと多くの人に言われました。しかし、NASAは私たちの脚本とストーリーを客観的に見てくれました。そして、私たちと同じように、この映画を、この大規模な偉業、つまりこの計画に携わった40万人の人々を称える機会だと捉えてくれたのです」
「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」では、NASAの建物に密かにつくられた月面でフェイク映像がつくられていく

まさにこの言葉通り、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は世界史に燦然と刻まれたプロジェクトに関わった人間たちの熱い思いが描かれた作品なのである。自ら「宇宙オタク」を自認する監督のグレッグ・バーランディも次のように語る。

「この作品には、国家登録され、他のどの映画にも使用されたことのない膨大な量の映像があります。私たちは、これらの映像を準備段階で入手することができました。そのおかげで、この映画をどのように撮影すべきかが見えてきたのです」

虚構の物語でありながら、作品が持つリアリティを担保しているのは、やはりNASAの強力なバックアップとこのアポロ計画時代の貴重な未公開映像だったかもしれない。

物語の「主役」でもあり、ニューヨークの広告業界で活躍する自信あふれるケリーを演じたスカーレット・ヨハンソンの尖った演技も、この作品の見どころのひとつだ。自身も企画開発のプロデューサーとして中心的役割を果たした彼女は、次のように語る。

「私はケリーを演じるつもりはありませんでした。でも脚本が届くと、とても素晴らしいものに仕上がっていました。読み物として秀逸で、会話のセリフもとても強いものでした」

ちなみに最終的に脚本を書き上げたローズ・ギルロイも女性で、ヨハンソンも「女性プロデューサーとして、これほど強い女性キャラクターをつくりあげた女性脚本家と仕事をするのは、とても正しいことに感じられました」と語っている。


 ケリーとコールは対立しながらも互いのなかに好意を覚えていく。『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(原題:FLY ME TO THE MOON、US 公開:2024 年7 月12 日)は、7 月19 日(金)より全国の映画館で公開。監督はグレッグ・バーランティ(『フリー・ガイ』製作)、出演はスカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ウディ・ハレルソンなど。

最後に、ある意味で「恋愛映画」であるかもしれないこの作品を観るにあたって、とても素敵な言葉を、監督のグレッグ・バーランディが語っているので紹介しよう。

「月に行くことに次いで、恋愛は人々の挑戦のなかで最も野心的なことかもしれません。月は神秘的で幻想的です。何千年ものあいだ、人類にとって月は夜に輝く光であり、そのなかで幻想的でロマンチックなことが起きていました。それが私たちのなかに根付いています。ロマンスや、当時の世界の憧れと共通しているのは、野心なのです」

連載 : シネマ未来鏡
過去記事はこちら>>

文=稲垣伸寿

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事