Official Columnist

稲垣 伸寿

シネマ未来鏡

映画と小説のあいだを往還するフリーランス編集者。出版社では週刊誌と文芸書の編集に携わりながら、映画の片隅にも足を踏み入れる。いまは自由な立場から編集と執筆を。昨年は年間500本の映画を観賞。本欄は「映画は世界を映す鏡、作品から未来を読み解く」を趣旨に。

  • ゴダールを知らなくても楽しめる「グッバイ・ゴダール!」

    ウディ・アレン82歳、クリント・イーストウッド88歳、ジャン=リュック・ゴダール87歳。映画界には、いまだ作品を撮り続ける巨匠監督が健在だ。高齢者問題などまるで関係なく、80代になってむしろその創作意欲が高まるくらいの活躍を見せている。なかでもゴダールは、映画監督としてのキャリアが最も長い。1950 ...

  • テニス界のアントレプレナー、闘うキング夫人の伝記映画

    大阪府出身のテニスプレーヤー、大坂なおみ選手が今年3月、WTAツアーのインディアンウェルズ・マスターズで優勝して話題をさらったが、この「WTA」というのは 「Women’s Tennis Association」のことで、日本では「女子テニス協会」と訳されている。WTAは1970年にアメ ...

  • 映画史に残るSF名作となるか? 「ユーチューバー」による初監督作

    いまでこそ、「ブレードランナー」(1982年公開)は、未来世界を描いたSFの名作として映画史にその名が刻まれているが、公開当初は不評で、上映も早々と打ち切られてしまった。その後、ちょうど普及し始めたビデオで、繰り返し観ることがたやすくなり、この作品の真価が認められる。この「リディバイダー」という地球 ...

  • 「盗んだのは絆」 カンヌ最高賞を受賞した「万引き家族」の観方

    「万引き家族」をパルムドール(最高賞)に選出したカンヌ国際映画祭の審査員たちに、まず敬意を表したい。この作品は、これまでの是枝裕和監督の作品のなかでも、到達点に位置するもので、彼がキャリアのなかで培ってきた「思考」と「技術」が結晶のように輝いているからだ。カンヌ国際映画祭は、ベルリン国際映画祭、ヴェ ...

  • 公開直前にもスキャンダル、世紀の誘拐事件を描く「ゲティ家の身代金」

    正直なところ、ケヴィン・スペイシーが演じるジャン・ポール・ゲティも見てみたかった気はする。実は、この作品、「ゲティ家の身代金」は、公開予定日の1カ月前に、まだ撮り直しをしていた。それもこれも、スペイシーのあのセクハラ報道が発端だ。すでに撮影も編集も終え、昨年11月14日のプレミア上映を待っていた矢先 ...

  • ザッカーバーグ、ジョブズを描いた脚本家が次に選んだ題材は?

    フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグを描いた「ソーシャル・ネットワーク」(デヴィッド・フィンチャー監督)、MLBオークランド・アスレチックスのGMをモデルとした「マネー・ボール」(ブラッド・ピット主演)、天才経営者のプレゼンテーションの秘密に迫った「スティーブ・ジョブズ」(ダニー・ボイル監督 ...

  • ガンダムやメカゴジラも登場 「レディ・プレイヤー1」はこう楽しむ

    スティーヴン・スピルバーグは実に器用な映画監督だ。なにしろ、いま世界的にヒットを記録している「レディ・プレイヤー1」を監督している最中に、もう1本、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」という作品をつくってしまうのだから。スピルバーグが「レディ・プレイヤー1」の撮影に入ったのは、2016年7月。早 ...

  • 「卒業」へのオマージュか? 「さよなら、僕のマンハッタン」

    どうやら1974年生まれの映画監督は、サイモン&ガーファンクルが好きなようだ。昨年、日本でも公開され、ロングランヒットとなった「ベイビー・ドライバー」は、長らく自分も忘れていたサイモン&ガーファンクルの隠れた名曲を劇中で印象的に使い、タイトルにまで使用している。4月13日に公開されたばかりの映画「さ ...

  • 歴史に「もし」を考えてしまうチャーチル「伝記」映画の迫力

    日本人アーティストの辻一弘氏が、第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことで話題の映画、「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」。同じく主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンがチャーチル本人になりきった演技も、この作品の見どころとなっている。もちろん、オ ...

  • スピルバーグは、なぜ新作を中断して「ペンタゴン・ペーパーズ」をつくったのか?

    アメリカの映画界には「ブラックリスト」がある。とは言っても、業界における好ましからざる人物の名前を列挙したものではない。まだ映画化されていない脚本がリストアップされたものだ。すぐれた脚本や脚本家を、効率良く発掘するために考えられたシステムだが、仕組みは次のようなものだ。有名無名を問わず脚本家は、月額 ...

  • 監督賞はまたもメキシコ出身、アカデミー賞の「国際化」事情

    第90回のアカデミー賞で、いちばんの栄誉とされる作品賞は、ギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」に輝いた。話し言葉を失った女性とアマゾンの神と崇められる異形の生物との「恋愛」物語は、アカデミー賞史上初めて作品賞を受賞した「怪獣映画」とも言われている。監督であるギレルモ・デル・トロは ...

  • 「グレイテスト・ショーマン」が描くダイバーシティへの視線!

    まずは、日本の配給会社にとっては耳の痛い話から始めよう。「グレイテスト・ショーマン」の公開前に映画館で流れていた予告編では、“『ラ・ラ・ランド』チーム最新作”という惹句が踊っていた。このコピーに反応して、劇場に足を運んだ人間も少なくはないと思う。実は、自分もそのひとりだ。しか ...

  • 外国人監督が描くミズーリ州「スリー・ビルボード」予想外のドラマ

    第90回アカデミー賞は3月4日(日本時間5日)に発表されるが、目下、ギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」と並んで、栄誉ある作品賞の本命候補と呼ばれているのが、マーティン・マクドナー監督の「スリー・ビルボード」だ。アカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデングローブ賞のドラマ部門(同 ...

  • 映画「デトロイト」がアカデミー賞から無視された理由

    第90回アカデミー賞のノミネートが発表された。いちばんの栄誉とされる作品賞にノミネートされたのは、以下の9作品だ。「君の名前で僕を呼んで」(ルカ・グァダニーノ監督)「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」(ジョー・ライト監督)「ダンケルク」(クリストファー・ノーラン監督)「ゲット・ア ...

  • ディザスターの幕の内弁当、映画「ジオストーム」が描く2022年

    「ディザスターフィルム(disaster film)」というジャンルがある。「ディザスター」は大災害や大惨事を意味する言葉だが、このジャンル、日本ではパニック映画とも言われ、自然災害のみならず、重大事故を題材としたものや怪獣映画に至るまで、そのなかに括られていたりする。映画「ジオストーム」は、「ディ ...

  • 「キングスマン」最新作はアメリカ文化への逆襲か?

    「キングスマン」は明らかに第2の「007」を狙っている。2015年に公開された第1作は、「古き良き時代のスパイ映画の復活」と高く評価されたが、第2作目の「キングスマン ゴールデン・サークル」は、それをさらにパワーアップ、監督のマシュー・ヴォーンがめざす「楽しいスパイ映画」を実現している。オープニング ...

  • ディズニーは「スター・ウォーズ」の家族のドラマをどう描くのか?

    「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」が絶好調のようだ。12月15日に封切られたが、全国377館、937スクリーンでの公開。大手の映画会社がメジャー作品の基準値としているのが300スクリーン前後での公開だから、その3倍以上の数字だ。公開当日、都内の繁華街にあるシネコンを覗いてみたが、全スクリーンの約半 ...

  • 天才を育てる環境とは? 映画「gifted/ギフテッド」が問う未来

    7歳の少女が、マサチューセッツ工科大学の学生が板書した数式の欠陥を指摘して、なおかつその証明もさらりと黒板に書きしるしてしまう──。映画「giftedギフテッド」のなかでも、もっとも観ていて痛快な場面のひとつだが、高度な数学書を愛読する少女メアリーにとっては、ごくあたりまえのことなのだ。その数学の天 ...

  • ヒーロー映画のオールスター化、人々はいま「連帯」を求めている?

    ヒーローは昔から孤独なものと決まっていた。正義のために孤軍奮闘で悪と戦う姿は、英雄物語として神話の時代から語り継がれてきた。さて、このところのアメリカン・コミックヒーローたちはどうだろう。どうやら彼ら(彼女もいる)は、しばらく前から「正義」について悩み始め、自らのヒーローとしての存在を問い詰め、その ...

  • 究極のネット社会はユートピアか? 映画「ザ・サークル」が示す境界線

    ラスト近くに気になる映像が登場する。世界一のSNSを運営する「サークル」という企業の社旗がはためくシーンだ。「サークル」という企業名から、「グーグル」を連想するのはたやすいことだろうと思うが、この「サークル」のロゴは、真円の90度方向から切れ込みを入れ、頭文字の「C」を表している。名前のような円環で ...