Official Columnist

稲垣 伸寿

シネマ未来鏡

映画と小説のあいだを往還するフリーランス編集者。出版社では週刊誌と文芸書の編集に携わりながら、映画の片隅にも足を踏み入れる。いまは自由な立場から編集と執筆を。昨年は年間500本の映画を観賞。本欄は「映画は世界を映す鏡、作品から未来を読み解く」を趣旨に。

  • 「スカイスクレイパー」の見どころは高さ1km超の香港のビル

    ご存知のように、いま世界でいちばん高い超高層ビルは、アラブ首長国連邦のドバイにある「ブルジュ・ハリファ」だ。軒高(屋根の地上高)が636m、その上に立つ尖塔まで含めると828m、フロアは162階にも及ぶ。ところが、映画「スカイスクレイパー」の舞台となる「ザ・パール」というハイテクビルは、高さが106 ...

  • もうひとつのカンヌ作品「寝ても覚めても」が照らす邦画の未来

    今年のカンヌ国際映画祭では、最高賞のパルム・ドールを受賞した「万引き家族」と並んで、コンペティション部門に出品された日本映画があった。濱口竜介監督の商業映画デビュー作にあたる「寝ても覚めても」だ。今回のコンペティション部門には、地元フランスのジャン=リュック・ゴダール監督「Le Livre d&rs ...

  • レバノン映画「判決、ふたつの希望」、法廷劇の陰に母の存在

    首都ベイルートの住宅街で些細な諍いが起きる──。パレスチナ人の現場監督ヤーセルが、アパートの補修工事を行っていたところ、そこに住むレバノン人のトニーが憤激、取り付けたばかりの排水管を破壊してしまう。その暴挙に怒ったヤーセルは、トニーに対して「クズ野郎」という言葉を吐き捨て、工事現場から立ち去る。かね ...

  • トム・クルーズはいつまでこの「ミッション」を続けるのだろうか?

    「ミッション:インポッシブル」の第1作が公開されたのは1996年、トム・クルーズが34歳のときだ。それからシリーズは数えて、今回の「ミッション:インポッシブルフォールアウト」で6作目となる。現在、トムは56歳、顔立ちは紅顔の「美青年」から、ややふっくらした中年オジサンとなっているが、劇中で見せるアク ...

  • 映画界のシンデレラストーリー 「カメラを止めるな!」が面白い

    製作費わずか300万円、監督も俳優もほとんど無名、6月23日に都内2館のミニシアターで始まった映画が、8月3日から全国80館近い劇場で拡大公開となる。新たな劇場のなかには、国内では1位2位の動員力を競うTOHOシネマズ日比谷やTOHOシネマズ新宿なども含まれ、映画ビジネスの世界でひさびさに生まれたシ ...

  • ゴダールを知らなくても楽しめる「グッバイ・ゴダール!」

    ウディ・アレン82歳、クリント・イーストウッド88歳、ジャン=リュック・ゴダール87歳。映画界には、いまだ作品を撮り続ける巨匠監督が健在だ。高齢者問題などまるで関係なく、80代になってむしろその創作意欲が高まるくらいの活躍を見せている。なかでもゴダールは、映画監督としてのキャリアが最も長い。1950 ...

  • テニス界のアントレプレナー、闘うキング夫人の伝記映画

    大阪府出身のテニスプレーヤー、大坂なおみ選手が今年3月、WTAツアーのインディアンウェルズ・マスターズで優勝して話題をさらったが、この「WTA」というのは 「Women’s Tennis Association」のことで、日本では「女子テニス協会」と訳されている。WTAは1970年にアメ ...

  • 映画史に残るSF名作となるか? 「ユーチューバー」による初監督作

    いまでこそ、「ブレードランナー」(1982年公開)は、未来世界を描いたSFの名作として映画史にその名が刻まれているが、公開当初は不評で、上映も早々と打ち切られてしまった。その後、ちょうど普及し始めたビデオで、繰り返し観ることがたやすくなり、この作品の真価が認められる。この「リディバイダー」という地球 ...

  • 「盗んだのは絆」 カンヌ最高賞を受賞した「万引き家族」の観方

    「万引き家族」をパルムドール(最高賞)に選出したカンヌ国際映画祭の審査員たちに、まず敬意を表したい。この作品は、これまでの是枝裕和監督の作品のなかでも、到達点に位置するもので、彼がキャリアのなかで培ってきた「思考」と「技術」が結晶のように輝いているからだ。カンヌ国際映画祭は、ベルリン国際映画祭、ヴェ ...

  • 公開直前にもスキャンダル、世紀の誘拐事件を描く「ゲティ家の身代金」

    正直なところ、ケヴィン・スペイシーが演じるジャン・ポール・ゲティも見てみたかった気はする。実は、この作品、「ゲティ家の身代金」は、公開予定日の1カ月前に、まだ撮り直しをしていた。それもこれも、スペイシーのあのセクハラ報道が発端だ。すでに撮影も編集も終え、昨年11月14日のプレミア上映を待っていた矢先 ...

  • ザッカーバーグ、ジョブズを描いた脚本家が次に選んだ題材は?

    フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグを描いた「ソーシャル・ネットワーク」(デヴィッド・フィンチャー監督)、MLBオークランド・アスレチックスのGMをモデルとした「マネー・ボール」(ブラッド・ピット主演)、天才経営者のプレゼンテーションの秘密に迫った「スティーブ・ジョブズ」(ダニー・ボイル監督 ...

  • ガンダムやメカゴジラも登場 「レディ・プレイヤー1」はこう楽しむ

    スティーヴン・スピルバーグは実に器用な映画監督だ。なにしろ、いま世界的にヒットを記録している「レディ・プレイヤー1」を監督している最中に、もう1本、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」という作品をつくってしまうのだから。スピルバーグが「レディ・プレイヤー1」の撮影に入ったのは、2016年7月。早 ...

  • 「卒業」へのオマージュか? 「さよなら、僕のマンハッタン」

    どうやら1974年生まれの映画監督は、サイモン&ガーファンクルが好きなようだ。昨年、日本でも公開され、ロングランヒットとなった「ベイビー・ドライバー」は、長らく自分も忘れていたサイモン&ガーファンクルの隠れた名曲を劇中で印象的に使い、タイトルにまで使用している。4月13日に公開されたばかりの映画「さ ...

  • 歴史に「もし」を考えてしまうチャーチル「伝記」映画の迫力

    日本人アーティストの辻一弘氏が、第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことで話題の映画、「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」。同じく主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンがチャーチル本人になりきった演技も、この作品の見どころとなっている。もちろん、オ ...

  • スピルバーグは、なぜ新作を中断して「ペンタゴン・ペーパーズ」をつくったのか?

    アメリカの映画界には「ブラックリスト」がある。とは言っても、業界における好ましからざる人物の名前を列挙したものではない。まだ映画化されていない脚本がリストアップされたものだ。すぐれた脚本や脚本家を、効率良く発掘するために考えられたシステムだが、仕組みは次のようなものだ。有名無名を問わず脚本家は、月額 ...

  • 監督賞はまたもメキシコ出身、アカデミー賞の「国際化」事情

    第90回のアカデミー賞で、いちばんの栄誉とされる作品賞は、ギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」に輝いた。話し言葉を失った女性とアマゾンの神と崇められる異形の生物との「恋愛」物語は、アカデミー賞史上初めて作品賞を受賞した「怪獣映画」とも言われている。監督であるギレルモ・デル・トロは ...

  • 「グレイテスト・ショーマン」が描くダイバーシティへの視線!

    まずは、日本の配給会社にとっては耳の痛い話から始めよう。「グレイテスト・ショーマン」の公開前に映画館で流れていた予告編では、“『ラ・ラ・ランド』チーム最新作”という惹句が踊っていた。このコピーに反応して、劇場に足を運んだ人間も少なくはないと思う。実は、自分もそのひとりだ。しか ...

  • 外国人監督が描くミズーリ州「スリー・ビルボード」予想外のドラマ

    第90回アカデミー賞は3月4日(日本時間5日)に発表されるが、目下、ギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」と並んで、栄誉ある作品賞の本命候補と呼ばれているのが、マーティン・マクドナー監督の「スリー・ビルボード」だ。アカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデングローブ賞のドラマ部門(同 ...

  • 映画「デトロイト」がアカデミー賞から無視された理由

    第90回アカデミー賞のノミネートが発表された。いちばんの栄誉とされる作品賞にノミネートされたのは、以下の9作品だ。「君の名前で僕を呼んで」(ルカ・グァダニーノ監督)「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」(ジョー・ライト監督)「ダンケルク」(クリストファー・ノーラン監督)「ゲット・ア ...

  • ディザスターの幕の内弁当、映画「ジオストーム」が描く2022年

    「ディザスターフィルム(disaster film)」というジャンルがある。「ディザスター」は大災害や大惨事を意味する言葉だが、このジャンル、日本ではパニック映画とも言われ、自然災害のみならず、重大事故を題材としたものや怪獣映画に至るまで、そのなかに括られていたりする。映画「ジオストーム」は、「ディ ...