メイズの身に降りかかったことを、経済的な側面から見ることもできる。彼の物語は、「戦争が経済成長を促す」という経済学者好みの考え方への戒めでもある。戦争が経済を成長させるという考えほど危険で、現実に反するものはないだろう。
こうした考えは、恐ろしい発想に根差している。つまり、政府が兵器、船舶、航空機の大量消費と人間の大量雇用という形で消費を莫大に増やすため、戦争は消費を刺激する、という発想だ。
もちろん、こうした経済学者たち(残念ながら、現代の「サプライサイド経済学者」も含まれる)が失念しているのは、政府は資源を火星から採取するわけではなく、政府が再配分する購買力は国民からもたらされるものだという点だ。
すべての需要は、生産に影響される。政府は自ら何かを生産するわけではないため、政府が「刺激」する需要は、他の場所で減少した「需要」にすぎない。どんどん愚かになっていく物語のために、そうした需要は拡大していく。
「戦争が経済を健全化する」という危険な概念の根底にあるのは、敵国の人々を殺傷し、ひいてはその国の経済を蹂躙することで、自国の経済を成長させられるという考え方だ。つまり経済学者たちは、経済成長とは世界中の優良顧客を殺すことによってもたらされると信じていることになる。
物語は、さらに悪い方向へと展開する。アメリカン・エンタープライズ研究所の保守派(ユバル・レビン、エドワード・コナードなど)はずっと以前から、米国は第二次世界大戦における最悪の局面を回避したおかげで戦後に急速な経済成長を遂げ、大きな支配力を手に入れ、世界の他の国々を背負う存在になったという作り話を宣伝してきた。このような恐ろしい見方は、世界経済が「閉じた経済圏」であることを無視している。