戦争はまさに、経済縮小の引き金だ。「富を破壊するための兵器」の開発が優先され、富の創造は後回しにされる。そして、戦争は何より、悲劇的な経済逆回転の引き金だ。すべての発展を推進するはずの人々が、生産的な仕事から排除され、殺すか、殺されるか、あるいは人的資本の消滅を手助けすることになるためだ。
ウィリー・メイズの話に戻ろう。メイズは、戦場に送られることはなかった。その代わり、米バージニア州ニューポートニューズに本拠を置く米軍の野球チームでプレーした。つまり、メイズは危険な状況に置かれたわけではなかったが、陸軍によって生産的な仕事から引き離された。これが、プロ野球選手としてのキャリアの初期を台無しにしたことは明白であり、ベーブ・ルースのホームラン記録を塗り替えるチャンスも失われてしまった。
単刀直入に言えば、メイズは生産的な仕事を奪われてもプロ野球選手としてのキャリアまで奪われたわけではないが、キャリアの一部はまぎれもなく断ち切られたのだ。
この事実は、経済が塊ではなく、個の集まりであるからこそ重要だ。戦争は、個々の人間を殺傷するだけでなく、生産活動から排除する。個々の人間の専門性から生まれる、最も生産性を追求できる仕事からも、彼らを排除する。
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、そして他の戦争でも、生産する代わりに生産から排除された何十万もの人々の人生において、メイズが体験したようなことが生じたのだ。
これは、経済学者という職業がいかに劣化したかを示す話だ。戦争は経済を縮小させる。経済学者がその逆を信じているという事実は、どんな詭弁や誤謬よりも、この職業を厳しく批判している。
(forbes.com 原文)