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2024.07.16 14:15

不便な地でも「旅の目的地」に 中山道・奈良井宿に見るローカルラグジュアリー

木曽漆器に盛り付けられた、地元の十数種類の野菜を生かしたサラダ(BYAKU Narai 提供)

鈴木賢治氏(BYAKU Narai 提供)

鈴木賢治氏(BYAKU Narai 提供)

鈴木賢治氏のビジョンと経営哲学

BYAKU Naraiの運営責任者である鈴木賢治氏は、47PLANNING(株式会社)の創業者。地元福島県いわき市の秋シャッター街の活性化の取り組みが評価され、全国各地の商業施設の開発などに声がかかる存在です。

鈴木氏が奈良井宿のプロジェクトに取り組むきっかけとなったのは、塩尻市主催のシンポジウムにゲストとして参加したこと。市長から「年間 63万人が訪れるが、ひとり950円しか使わない」という現状を聞いたことでした。

歴史や文化、そして現存する奈良井宿という地域のポテンシャルがあるにもかかわらず、域内消費につながっていない......鈴木氏は地域の魅力を再発見し、それをローカルラグジュアリーとして磨き上げ、訪れる人々に伝えることで、経済効果を大きく生み出しています。

これまで奈良井宿には、平均客単価が1万円前後の民宿しかありませんでした。しかし、BYAKU Naraiでは、平均の宿泊客単価が一人当たり5万円から6万円にのぼります。この大きな変化は、鈴木氏の取り組みがもたらした新たな客層の獲得によるものです。半数以上はインバウンドで、主にアメリカやカナダ、欧米圏からの観光客が訪れており、古くからの落ち着いた宿場町に欧米などからの外国人観光客の滞在が見られるようになっています。また、特別な記念日を過ごすために東京や名古屋などから訪れる人々も多いといいます。
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