食&酒

2024.07.13 11:15

ジャグジー開発からワイナリー経営まで 家族に受け継がれる哲学とは

ヒツジやヤギと共存しながら健全な畑でブドウを育てている

ヒツジやヤギと共存しながら健全な畑でブドウを育てている

ジャグジーバス開発秘話から読み解く哲学

その発言から思い起こされるのがジャグジーバスの誕生秘話である。ヴァレリアーノ・ジャクージは、1907年にイタリアからアメリカに移住し、兄弟で飛行機製造業を開始。その後、ワイン用のブドウ栽培や井戸水ポンプの製造を経て、最終的にジャグジーバスの開発で成功をおさめた。

実は、開発のきっかけとなったのはジャクージの甥がリウマチを発症したことにある。彼の免疫異常による関節の痛みを少しでもやわらげるために、井戸水ポンプのメカニズムを水中ウォーターポンプに適用しジャグジーバスの原型を誕生させた。その後この商品は、ハイドロセラピーやリラクゼーション効果があるとして注目を集めるようになる。

開発者の名を冠した「ジャグジー」は今や世界のセレブリティはじめ多くの人々に愛されているが、元を辿ると身内の療養のために開発されたものだということが興味深い。病気の症状の緩和を願って生みだされた商品が、世界に癒しをもたらしたのだ。

「祖父はいつも家族や親戚、社員や身の回りの人の幸せを願う人でした」と語るフレッド・クライン。世代を超えて彼らに共通していることは、新しい試みや事業拡大を目指す大前提に「家族の幸せ」と「次世代への継承」という揺るぎないテーマがあることだ。たとえ事業内容が変わってもその想いは脈々と受け継がれている。

新商品「ソノマAVAシリーズ」に込めた想い

さて、クライン家にとって世界初輸出となった「ソノマ AVA シリーズ」であるが、こうした哲学を学んでからテイスティングすると、より味わい深く感じられる。

彼らの商品の中では最高級レンジとなるこのシリーズを生み出した理由について、「ソノマは子供たちの生まれ故郷であり、特別な場所です。厳選された故郷のブドウだけを使ったシリーズを造ることで、それが子供たちの宝となり、受け継がれていくと考えました」とナンシー・クラインは自信に満ちた表情で語った。

「ソノマ AVA シリーズ」は4種類(シャルドネ、ピノ・ノワール、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン)あるが、いずれも品種個性をキレイに映し出していて、ソノマの冷涼な気候を連想させるエレガントさとファミリーの人柄に紐づいた親しみやすさを持ちあわせている。お披露目会場となった『俺のフレンチ グランメゾン 大手町』が手掛けた料理とも好相性で、ペアリングの幅の広さも確信した。
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