対照的に、台湾と東南アジアの貿易総額は2021年に1175億ドル(約19兆円)だったのが翌年には1346億ドル(約22兆円)へと、1年間で10%近くも増加した。台湾の中国への輸出依存度も縮小している。香港を含めても、直近の輸出額は2018年以降最も少なくなっている。減った分の大半は東南アジアに流れている。
中国政府にとってさらに厄介なのは、台湾からの投資の流れが劇的に変わっていることだろう。2010年以降、台湾企業による対中投資額は減少し続けている。2023年は前年比約40%減少の41億7000万ドル(約6700億円)相当で、2018年の3分の1以下だった。
その減少分を超える額が東南アジア、特にシンガポール、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイに流れている。これらの国々には現在、台湾企業による投資の約40%が注がれており、この割合は対中投資よりも大きい。台湾からベトナムへの投資はわずか数年で4倍に増え、特に中国指導部が最も関心を寄せているハイテクの電子機器分野への投資が増加している。台湾のハイテク企業であるフォックスコン(富士康)、ウィストロン(緯創資通)、ペガトロン(和碩聯合科技)、クアンタ(広達電脳)は、いずれもベトナムでの事業拡大を計画している。
中国政府はこうした経済的現実を好まないが、同時に厄介なのは、台湾の脱中国の動きが安全保障に及ぼす影響だ。東南アジアや南アジアと台湾の間で貿易や投資が活発になるほど、アジア諸国が台湾に寄せる関心は大きくなり、中国による圧力に抵抗する可能性も高まる。これらの国々に、中国が脅しとして繰り返す台湾の実効支配を阻止する軍事力があるなどと主張する人はいないだろうが、より多くの国々が関心を寄せることで、中国は台湾に対して強い態度に出づらくなる。
(forbes.com 原文)