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2024.06.30 11:00

7月上場のタイミー。小川嶺は「はたらく」市場をどう開拓する?

このタグラインには、「これからのタイミーは、国内の重要な社会課題である人材不足の解消に貢献し続けるために、働き手の一人ひとりが自分に合ったライフスタイルを実現できる働き方の選択肢(=彩り)を提供すること。そして、『はたらく』ことがもたらすポジティブな側面をより多くの方に伝えたい」という思いを込めた。「皆が時間や場所に制約されずに好きな仕事ができて、チャレンジをすることでスキルや給料が上がっていく楽しさを得られる。そんな社会を実現したい」

こうしたタグラインやミッション「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」を体現するかたちで、タイミーは24年2月にキャリア支援サービス「タイミーキャリアプラス」をローンチ。競合他社の脅威も迫るなかで、小川はスポットワークからキャリア支援へと事業の幅を広げた。

タイミーキャリアプラスは人材を採用したい事業者が、タイミーの利用者(働き手)に正社員への応募を打診できるサービス。定職に就きたいと考えていても資格やスキルがなく断念せざるをえない働き手と、正社員を雇用したいものの求職者がなかなか集まらない事業者の声を聞き、そのギャップを埋めるべくスタートした。

タイミーには元々、働き手の信頼性を確認するために事業者側のレビューや評価、スキルを認定する機能がある。本事業ではそうした過去の就労データを、正社員採用に活用した。また、働き手側は、就職サポートやキャリア相談、資格や免許取得・スキル習得のためのリスキリング講座を受けることもできる。現在、ホテルや飲食、運輸業界などを中心に活用が進んでいるという。

「タイミーは短期アルバイトのマッチングで終わらず、キャリア形成や転職支援まで一気通貫で担っていく。それが、日本の“はたらく”にまつわる社会課題の解決を目指すプラットフォーマーとして、今果たすべきミッションです」

小川は、日本を代表する経営者になるべく、“嗅覚”を磨くことにもいそしんできた。嗅覚とは、いわば「未来を見る力」。そのために経営者の先輩だけでなく、世界を舞台に活躍する同世代のアスリート、アーティストまでさまざまな人と積極的に話すようにしてきた。以前から温めていたという「タイミーキャリアプラス」のローンチ時期も、そうして培った嗅覚で決めた。

業界のリーディングカンパニーとして大きな影響力をもった今、“社会を変える”ために小川はロビイング活動にも力を入れる。非正規ワーカーのマッチングサービスは格差の固定化につながるおそれもあるなか、タイミーはそれを排除するサービスを手がけてきた。

「政治家の方からするとタイミーは『世の中に良い影響を及ぼすのか、悪い影響を及ぼすのか』がわからない未知の存在でしょう。時代にアジャストしたサービスであり、働く人の可能性を広げる存在であることを、適切に伝えていきたいです」


おがわ・りょう◎1997年生まれ。2017年、大学2年生のときにアパレル関連事業を立ち上げるも1年で事業転換を決意。18年にスキマバイトアプリ「タイミー」のサービスを開始。「一人ひとりの時間を豊かに」というビジョンのもと様々な業種・職種で手軽に働くことができるプラットフォームを目指す。

文 =堤 美佳子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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