テクノロジー

2024.06.28 15:15

Apple Vision Pro、AIの真価と「空間コンピューティングの先」にある未来

ImageFlow / Shutterstock.com 画像はイメージです


その第1弾が、メタバース空間「バーチャルあべのハルカス」の新たな接客サービスとして今年3月末に導入された会話型生成AI「AIあべのべあ」です。
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大阪のランドマーク、あべのハルカスの展望台「ハルカス300」のキャラクターである「あべのべあ」をモチーフとし、お客様の質問に対して自動で回答を生成し、日本語のほか、英語・中国語など複数の言語で日常会話を楽しんでいただけます。
AIあべのべあ (c) 近鉄不動産株式会社 (c) Cluster,Inc.

AIあべのべあ (c) 近鉄不動産株式会社 (c) Cluster,Inc.


ユーザーからの反響は、最初は単純に可愛いというコメントが多かったのですが、コミュニケーションできることに対する好意的な感想も多く寄せられ、AIだからこそ思い通りにならないことで愛着が湧くといった面白い反応も見られました。

現在「AIあべのべあ」には、OpenAIの大規模言語モデルを使用していますが、今後に向けてMeta社のLlamaなども含め、最適なモデルや開発インフラの検討を進めています。企業の情報を預かるため、適切なチューニングが非常に重要で、そのうえお伝えしてきたように、バーチャル空間内での自然なコミュニケーションができるインターフェースも必須ですので、色々と試行錯誤を重ねています。

メタバースでの「AIエージェント」の浸透は? 現実世界で起こる前の「壮大な社会実験」か

僕は今後、こうしたAIエージェントがメタバース内で増加していくことは、利便性の観点から避けられないと考えています。

利便性と一言で言っても、様々な利便性がありますが、例えば、友達と楽しい時間を過ごす時でも、もしかしたらAIに囲まれているほうが幸福度が高くなるかもしれません。
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相手がAIなのか人間なのかも分からずに、人間が好みで付き合う相手を選ぶと自然とAIを選んでいた、なんてことも起こり得るでしょう。

将来的には、徐々にAIエージェントがcluster内に増えていき、友達だと思っていた人が気づいたらAIエージェントだったというSFチックな世界が生まれたら面白いなと思っています。
cluster

●倫理的な議論の必要性

「AIあべのべあ」は現時点では、ボイスチャットや身振り手振りを自由にできる段階にはなく、まだファーストバージョンです。

「AIであること」も認識できる形で提供してはいるものの、メタバースは「人間とAIの区別が曖昧になる時代」に突入し始めているかもしれません。

これは思考実験的ですが、AIエージェントが増加すると、倫理的な問題から「AIエージェントはAIエージェントであることを明確にするべき」というようなガイドラインを、国や世界から求められることになる可能性があります。

我々は「人間とAIという関係性を『消費』することが倫理的にどうなのか」を議論しないといけなくなるだろうし、そういったSF的な状況が現実味を帯び始めました。

倫理的な視点での議論の土台は、まだ生まれたばかりだと思います。ダメだと断ずる確固たる哲学があるわけでもなく、それを良しとする哲学もないという状況です。

AIエージェントが人間と同じように振る舞い、人間と勘違いされながら、人間と関係性を結ぶ。それが、これから起こることだろうし、今まさに起こっていることなのかもしれません。

映画『ブレードランナー』や森博嗣先生の小説『Wシリーズ』のような世界のイメージです。『ブレードランナー』では、レプリカントと呼ばれるアンドロイドが人間社会に紛れ込み、人間なのかアンドロイドなのかわからない状態が描かれています。いまのロボット技術を鑑みるに、現実世界で10年後にそのような時代が到来しているとは考えにくいですが、バーチャル空間やメタバースの世界では、それが徐々に現実になりつつあると感じています。 

現実世界でアンドロイドが人間社会に浸透していく前に、メタバースの世界でAIエージェントの浸透が先に起こるのではないかと考えています。それは、まさに壮大な社会実験とも言えるかもしれません。 

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画像=クラスター 構成協力=でんこ 編集=宇藤智子

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