・AutoPhagyGo
同じく日本のスタートアップ「AutoPhagyGo」は、細胞内のオートファジー機能を解析する技術を持っている。この技術により、老化や病気のメカニズムを解明し、健康寿命を延ばすための新たな活用法を模索している。オートファジーとは、細胞内のタンパク質を分解し、新しいタンパク質を作る材料や細胞機能の維持に役立つものに生まれ変わらせることで、細胞の健康を保ち、栄養環境の変化に対応したりする機能のことだ。東京工業大学の大隅良典栄誉教授が、世界で初めてオートファジーのメカニズムを解明して2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞して以降、日本で積極的に研究が行われている分野だ。AutoPhagyGoは、大隅名誉教授とともに研究を進めてきた大阪大学の吉森保教授により設立された。
・エム
また、エムは脳ドックなど医療機関で撮影された頭部MRIの画像解析により、30代から始まる加齢に伴う脳の変化を数値で評価し、受診者に「脳の健康マネジメント」という体験を提供することを目指している。その変化をログとして蓄積することで、脳の状態観察による疾患の予防に加え、認知症の初期兆候を見逃さずに検出することにも応用可能だ。同社は米ジョンズ・ホプキンス大学医学部放射線学科の教授である森進氏が2021年に設立した。OECDによれば、100万人あたりのCT数は日本は116台でOECD加盟国で1位、2位のオーストラリアは70台で、圧倒的な差をつけている。同じくMRI数は、100万人あたり57.4台で1位、2位の米国は38台と、日本のCT・MRIの数は他国と比べても圧倒的に多いことがわかる。エムは宝の山であるこれまで撮影されたMRIやCTスキャン画像に注目し、特に高齢化が進む日本においてより大きな問題となる「認知症」に取り組んでいる。
・emome
「emome」は、介護事業所を、エンタメや美容など包括的な良き生活の場に変え、日本モデルの構築を目指している。その大きな基盤となるのが「シニアカレッジ」で、職員の負担軽減と利用者の楽しみの増幅を実現する映像活用レクリエーションを展開している。彼らの取り組みは、介護業界を大きく変える可能性を秘めている。東大発のスタートアップとして名を馳せる同社は、利便性と楽しさの両立を実現する「シニアカレッジ」で、利用者のQOLニーズを持続的に把握し、「やりがい」を創り続け、シニアの自己効力感「エフィカシー」を高める取り組みを行っている。
介護施設で様々な価値が利用者に届けられ、そこで経済と感情が動く環境の構築に動いている。
不老長寿に対する人類への想い
これらのスタートアップが取り組む先端技術と、その背後にある情熱は、まさに新たな時代の幕開けを象徴している。彼らの目指す未来は、私たちが直面する課題を解決し、明るい希望をもたらすだろう。余談ながら、今から2200年前、秦の始皇帝が「東の国に不老長寿の薬あり」と徐福に命じて探しに行かせたことがある。始皇帝は、不老長寿の薬を求めて四方八方に人を派遣したが、その試みはことごとく失敗に終わった。その中でも特に興味深いのは、方士であった徐福が探し求めた薬が、実は海藻の昆布だったという説である。徐福は斉の国で生まれた方士だったが、彼が辿り着いたとされる場所の一つが紀伊の熊野浦であり、そこに不老長寿の薬があると信じていたという。