国内

2024.06.24 17:00

古の時代から人類が追い求める「不老長寿・健康」テックの現在

時同じくして、ペルシャ神話では、イスカンダル王は、不老長寿の花である蓮を探して旅に出る。このストーリーも古代マケドニアのアレクサンドロス大王の生涯が19世紀の作曲家ポール・デュカスによって空想として描かれたもので、何ひとつ根拠があるものではない。

日本では「わが君は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで」と「君が代」の一説にある古今和歌集の賀歌(親しい人が長寿を迎えた際に行う宴席で読まれる和歌)が詠まれていた。これは、相手の長寿を祝い、「千代にも八千代にも(1000年も8000年も)」長生きをしてほしいという願いが込められている。

ともかく、始皇帝とイスカンデル王が求めた不老長寿の夢は果たせなかったが、その探求心と人間の飽くなき不老長寿への想いは現代の私たちにも通じるものだ。古からの探究心と同じくして、現代の技術を駆使して不老長寿の可能性を追求することは、人類の進歩の原動力となってきた。

セラノスの教訓を経て再び盛り上がる

かつてバイオテクノロジーの分野には米国のセラノスというスタートアップが大きな注目を集めたことがあった。同社は、一滴の血液であらゆる病を診断するという夢の技術を掲げ、一時はシリコンバレーの寵児となった。しかし、その夢はすぐに詐欺であることが暴かれ、崩れ去った。この事件により、シリコンバレーにおけるバイオテクノロジー投資は一時期、勢いを削がれている。

セラノスの失敗は大きな教訓を残し、投資家たちに慎重さを求める結果となった。しかし、技術革新の波は止まることを知らず、新たなスタートアップたちが次々と台頭している。再生医療や遺伝子編集技術の進展は、老化のプロセスを遅らせる、あるいは逆転させるという壮大な夢を再び現実のものとしつつある。現にOpenAIのサム・アルトマンやアマゾン共同創設者ジェフ・ベゾスはLongevityセクターに巨額の投資を注ぎ込んでいる。

5月にスクラムスタジオは東京で「Well-BeingX・AgeTechX Meetup!」というイベントを開催した。上述のスタートアップを含む10社以上の関連企業が参加。さらに多くの日本の大企業、自治体がこのセクターにおける事業共創を目的として来場した。Longevity・AgeTechセクターへの期待と熱量が感じられるイベントとなった。

新たな技術と情熱に満ちたスタートアップたち、協業を望む大企業、より豊かな市民生活を望む先進自治体が一体となり、不老長寿の未来を切り開く先駆者となり、私たちに新たな希望と夢を与えてくれるだろう。

5月に東京で開催された「Well-BeingX・AgeTechX Meetup!」の様子

5月に東京で開催された「Well-BeingX・AgeTechX Meetup!」の様子

連載:SCRUM FOR THE FUTURE
 ─ 次にくるスタートアップ&トレンド
過去記事はこちら>>

文=渡部優也 編集=安井克至

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事