人が夢を思い出す時の感覚は、きわめて個人的かつ感動的な体験だ。おそらくあなたは、憂鬱な夢から醒めて取り乱したことや、夢の中の偶発的な出来事が現実世界で直面している問題のユニークな解決方法をもたらした時に強いモチベーションを感じたことなどを思い出すだろう。
夢に目的があるとしても、どう役立てるかは本人次第
ニューロンが様々な周波数で脳波を発する複雑なシステムについて誰もが知りたいわけではない。しかし生理学的レベルでは、睡眠中に夢を見ることが、日々の活動にとって大切な、健康的で疲れを回復させる睡眠の兆候であることを裏付ける重要な証拠がある。これは、本人が気づいているかどうかに関わらず、無意識のうちに起きることだ。しかし、自分の夢を他人と共有することによって、「夢を見ることへの意欲」という新たな要素が加わり、決まった時間に寝る、寝る前にスマホを見ないなど、よりよい睡眠習慣の実践へと導かれる。
楽しい夢、奇妙な夢、怖い夢、あるいはおかしな夢について話したくなる気持ちは誰にでもある。事実、まさにそれを行うためのアプリがいくつか存在している。愛する人やよく知っている人とだけでなく、赤の他人とも共有するアプリだ。
「2人の人が全く同じ夢を見て、全く異なるメッセージを受け取る例があることがわかっています。それは、夢が主観的に解釈されるものだからです」と、夢を解釈するだけなく、夢を見る人たちの感覚を磨き、互いにつながるためのアプリであるDreamigosの創業者でチーフ・ドリーマー(Chief Dreamer)という肩書を持つパトリック・レインはいう。
DreamigosをはじめとするDream Catcher、DreamAppなどの夢の日誌アプリの背景にある理論は、夢の共有や記録を行うことで、夢を思い出しやすくなるということがある。しかし、それは全体像の一部にすぎない。
「ほかの人の夢を分析することによって、自分の夢を分析するのと同じくらいわかることがあります。そのプロセスによって視点が得られるのです。「もしこれが自分の夢だったら何を意味していたのだろう?」と自分に問いかけることは、自己発見のための非常に有効な訓練になります」とレインは説明する。
レインや彼と同じようなアプリを開発した人たちは、何かを掴んでいるようだ。自分の見た夢を自分だけに閉じ込めておくことは、人とつながるチャンスを無駄にしているように思える。多くの人が聞きたがっているのだから。
夢を共有したくなる理由の科学的説明
夢を共有する人たちは、他の人たちが好奇心を持って聞きたがっていることに気づくことが多い。事実、自分の夢について語る人たちに対して、ほとんどの人が、ネガティブではなくポジティブな反応を見せることを、2015年に学術誌、Imagination, Cognition and Personalityに掲載された研究は示している。それより新しい、2019年にFrontiers in Psychology誌に掲載された研究は、夢の共有が、夢の中に深く留まっていた感情を処理するのに役立つことを発見した。これは、特に悪い夢を見た時、感情の解放や感情認識を高めることにつながる。さらに、夢の共有は社会的結合をも強化する。夢を共有し、夢について聞こうとする意欲は、信頼と寛容性を表すものであり、それは健全な双方向の関係を築くための鍵となる要素だ。