欧州

2024.06.17 11:00

ウクライナ空軍、貴重な攻撃機を駐機中にまた失う 同じ基地で損失重ねる失態

ウクライナ空軍がこれらの新たなシステムをどう配備するかにもよるが、ドルヒンツェベ航空基地は近いうちに防空が強化される可能性がある。それまでの間、航空機の搭乗員たちはこの基地を使うのを避けたほうがよいかもしれない。そうできない理由もないはずだ。

Su-25は燃料満タンの状態で数百km飛行できる。この亜音速攻撃機は、ドルヒンツェベ航空基地から飛び立たなくてもウクライナ南部の前線に到達できるのだ。ウクライナ空軍は国内におよそ20カ所ある大規模な飛行場や、数十カ所あるより規模の小さな飛行場、さらに各地の高速道路に設けられる代替滑走路も利用できる。

ウクライナ空軍の戦闘機旅団はもともと、保有機をロシア側に狙われにくくするため予測不可能な運用をするようにしてきた。在欧・アフリカ米空軍のジェームズ・ヘッカー司令官によると、ウクライナ軍のパイロットは「発進したのと同じ飛行場に着陸することはほとんどない」という。

つまり、ドローンによる攻撃にさらされていない基地からSu-25を安全に発進させ、そうした基地に安全に帰還させるインフラや手順は整っている。Su-25はもちろん、低高度を低速で飛行しながら無誘導弾を発射する攻撃任務に際しては引き続き危険にさらされるだろうが、しかるべきインフラ使用や手順にのっとれば、空軍が傷んだ防空システムの立て直しに苦労している間も駐機中の被害は避けられるはずだ。

ウクライナ空軍のSu-25が今夏あるいは来年に枯渇するといった事態は考えにくい。ロシアが2022年2月に戦争を拡大した時点で、ウクライナ空軍は完全に運用可能なSu-25をおよそ30機保有し、さらに13機がオーバーホール中だった。その後、北マケドニアから余剰のSu-25を4機譲渡されたほか、1991年のソ連崩壊後、保管庫に入れられていた30機ほどの古いSu-25の一部を引っ張り出して修理している。

これらは、ドルヒンツェベ航空基地で先週失った分を含め、これまでに撃破されたウクライナ空軍の18機のSu-25を補って余りある。ウクライナ空軍唯一のSu-25運用部隊である第299戦術航空旅団は、戦争拡大前よりも保有機数が増えている可能性がある。もっと言えば、その可能性が高い。

だからといって、ウクライナでとりわけ攻撃を受けやすい航空基地にSu-25を隠しもせず駐機し、まだ十分に使える攻撃機を無駄に失っていいということにはならない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事