働き方

2024.06.17 08:00

米国の在宅勤務率が「2020年以降で最低」に、それでも一部業種では6割超え

WFHリサーチによると、リモートワークは2019年から2023年にかけて5倍に増加した。これはパンデミック前のほぼ40年間の伸びに匹敵する。パンデミック前の在宅勤務率は7.2%だったが、2020年5月には61.5%まで急増。その後、徐々に減少して2022年半ばに約30%で安定し、2024年に入ってからわずかに低下して28%となった。最近のデータでは緩やかな減少が続いているが、「テクノロジーが向上してリモート協業の効率化が進む」につれ、リモートワーク率は「再び上昇する」ことが予想されるとWFHリサーチの月例報告は述べている。

「今のところ直近2~3年と比べて通勤頻度を少しばかり増やせる状況にあり、それが(在宅勤務率の)低下傾向をもたらしている」と、経済学者でWFHリサーチ共同創設者のホセ・マリア・バレロはフォーブスに説明する。長期的には、テクノロジーの進歩が主な推進力となって在宅勤務の可能性が広がり、対面勤務の必要性やメリットは低下するとの見方を示した。

特定の業種や大都市圏ではリモート勤務日数やリモートワーカーの割合が圧倒的に多く、IT、金融、ビジネスサービス業界がこの傾向を主導している。WFHリサーチのエコノミストが2023年に行った調査によれば、これらの業界には在宅勤務が魅力となりやすい特性がある。給与水準が高いため限界税率が上がり、在宅勤務に対する税制優遇のインセンティブがより強く働くことや、集中力を必要とする分析系の仕事であり、在宅勤務のほうが作業効率が上がると考える人が多いことなどだ。

2024年5月の在宅勤務率は、人口上位の9大都市圏すべてで全米平均を上回った。調査チームは人口密度と在宅勤務率に相関関係があると指摘しているが、各都市圏の主要産業も大きな要因となっている可能性がある。首都ワシントンでは企業運営や金融に携わる人が多く、ロサンゼルス大都市圏は芸術・エンターテインメント産業、サンフランシスコ・ベイエリアはIT関連と、いずれもリモート勤務やハイブリッド勤務の多い分野が産業の中心を担っている。

在宅勤務への大規模なシフトは、米国人の働き方だけでなく、買い物のしかたも変えた。クレジットカード大手マスターカードの調査部門マスターカード・エコノミクス・インスティテュート(MEI)によると、2024年3月までの1年間のEコマース支出は3750億ドル(約58兆8000億円)で、パンデミック前の水準に基づく予想を上回った。

オンライン消費の急増はリモートワーカーやハイブリッドワーカーの多い地域でとりわけ顕著で、日中の就業時間帯(午前11時~午後5時)の食料品支出が2019年と比べて増えている。これは、特にオフィスでのインターネット利用が制限されている業種において、在宅勤務のおかげで勤務時間中でもオンラインショッピングが可能になったことなど、いくつかの要因が影響しているとMEIは示唆している。また、リモートワーカーの所得水準の上昇や技術の進歩がこの傾向に拍車をかけているという。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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