北米

2024.06.13 09:30

米軍がレーザー兵器でドローンを撃墜し始めたもよう AIで識別、弱点見抜く

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鍵はソフトウェアに

「LOCUSTがほかのレーザーと違うところは、世界トップクラスの捕捉、照準、ビーム制御を行える点です」とマネーメーカーは言う。「加えて、信頼性が高く実戦で使えるシステムを構築できることも実証されています」
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ブルーヘイローは40年あまりにわたってレーザー通信を専業としてきた会社だ。同社のシステムは国際宇宙ステーション(ISS)や米国の軍事衛星でも採用されている実績がある。こうした歴史から、高速で移動する目標をレーザー照射点で追尾する技術である「ビーム制御」に関して、同社は非常に高い専門技術と知見をもつ。

マネーメーカーによれば、ハードウェアの大半は特製品ではなく市販の部品からつくられている。真の技術的進歩は別のところにある。

「当社の『特製ソース』は、ソフトウェアによるビーム制御と、そのソフトの上で動くAI(人工知能)ツールキットです」
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この制御システムは、たんにレーザービームを目標のドローンに向けるのではなく、そのドローンを可能なかぎり最も効率的に破壊できるように照準を合わせる。これは、AIツールによってドローンのタイプを識別し、ビームで最もダメージを与えられる弱点を特定することで可能になっている。

「たとえばドローンに回転翼があれば、当社のシステムはモーターがどこにあるかを理解し、そこを狙って攻撃できます」とマネーメーカーは説明する。より高度なタイプのドローンではシーカーヘッド(目標を探知・追尾するセンサー)を攻撃することなどもできるという。

LOCUSTのレーザー照射点は25セント硬貨(直径約24mm)ほどの大きさで、一点に集中して当て続けられるので、米軍で「グループ3」と分類されるような比較的大型のドローンも一瞬で焼き切って破壊できる。マネーメーカーの話では、ビームは6mmの厚さの鋼鉄もたやすく貫通するという。

もっとも、パワー(出力)以上に重要なのはコントロール(制御)だ。メガワット級の出力があっても、目標に当てることができなければ意味がない。

「より高出力のレーザーが求められがちですが、それは有効性という点を覆い隠してしまうきらいがあります」とマネーメーカーは話す。「安定性と制御性能が高ければ、もっと低い出力でも非常に効果的に交戦できるのです」

まさに的を射た指摘である。1973年の実験での撃墜は、本来は標的のドローンの燃料タンクを発火させ、激しく炎上させて破壊するはずだった。ところが、ビームは燃料タンクの後方に当たり、制御ケーブルが溶かされた結果、ドローンは墜落した。それに対して、LOCUSTはドローンの特定のポイントを正確に狙って破壊できる。レーザーの力任せにまぐれ当たりを期待するのではなく、優れたソフトウェアで精密に制御することで、高出力レーザー兵器はようやく実用的なものになったということだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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