経済・社会

2024.06.12 18:15

米国が唱える2027年危機、米が唱えるプランに従うだけでいいのか

それでは、これで米中のミサイル・ギャップが解消されれば、すべてうまく行くと考えてよいだろうか。吉崎氏は「プランB、つまり今指摘されている以外のプランも検討するべきだと思います」と語る。概観した通り、米中ミサイル・ギャップの解消に向けて、主導権を握っているのは米国だ。「2027年までに」という時代精神を作ったのも米国だし、対応するための兵器も米国製。同盟諸国を主導しているのも米国だ。吉崎氏は「米国は、2027年までの競争で勝った者が世界を主導すると考えています。日本にとって、中国よりも米国主導の世界が望ましいと思いますが、米国に言われるままで果たして良いのか、ということも考えるべきです」と語る。確かに、トマホークひとつをみても、米国の「時代精神」にあおられて、わざわざ古いものを急いで買わされたようにも見える。

日本は、米国が唱える「対中抑止力の強化」に同調する一方、台湾有事で戦域が重なると言われる南西諸島の住民を保護する措置はこれからという状況だ。抑止力強化のためのミサイル部隊配備を先行させた結果、日本政府と沖縄県との間には微妙な空気が流れている。

吉崎氏は米国主導の世界が続いた場合、例えば「F22戦闘機は米国だけが保有し、同盟国には一切売らない。F35戦闘機は同盟国も保有」というように、米国一強の時代が続く仕掛けを考えるだろうと指摘する。さらに、「技術開発、情報共有のレベルに応じて、同盟国に『応分の負担』を負わせるでしょう」(同氏)。吉崎氏は「同盟というものは、他に選択肢がないので、ありがたい関係ですが、高くつくのかもしれません」と語る。

NATO(北大西洋条約機構)は、ロシアのウクライナ侵攻によって「欧州正面での抑止が破れた」現実に直面し、同盟として「戦闘に勝利する」ことを軍事目的とするように急変した。加えてNATOは、米本土から発進するB52戦略爆撃機との「核演習」を実施し、ロシアの戦術核使用に対する直接的な抑止を求めている。ハドソン研究所の創設者であるハーマン・カーンが「考えられないことを考える」と称した、核エスカレーションを語る時代がやってきたと言える。吉崎氏は「こうした米中ロ間の戦略的競争の新たな展開を日本も注視するべきでしょう」と語った。

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