同様の機能を、生成AIの活用により先に実現している他社のサービスも存在する。だがそのことを前提としても、最終的にApple Intelligenceの各機能が、iOSやmacOSの洗練されたユーザーインターフェースに組み込まれた上で、ユーザーがストレスを感じることなく使えるようになることへの期待は大きい。
WWDCの会場で実機によるデモンストレーションは行われなかった。代わりに基調講演の直後に開催された、ソフトウェアエンジニアリング担当 上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏と、マシンラーニング&AI戦略担当 上級副社長のジョン・ジャナンドレア氏によるトークセッションで、2人がApple Intelligenceに関する詳細に踏み込んだ。
セキュアで環境負荷も小さい
フェデリギ氏はApple Intelligenceが目指すところは「ユーザー個人を理解しながら、本当に役立つ体験を提供するサービス」であると説いた。ユーザーにAIの有用性を実感させるためには、個人に最適化された使い勝手を実現することが不可欠だ。Apple Intelligenceの基本はオフラインのデバイス上で完結する処理になるが、より多くの処理能力を必要とする機能やサービスを実行する場合には大規模なサーバベースモデルも併用する。
アップルがPrivate Cloud Computeと銘打つ処理は、Appleシリコンを載せたクラウドサーバ上で実行される。ユーザーはメールやメッセージ、写真など個人情報のすべてをクラウドに送る必要はなく、代わりにApple Intelligenceは複数のアプリから集めた小さな情報の断片を解析してユーザー個人を特定して、最適な処理を実行する。その際にサーバーへのリクエストは暗号化され、通信時にはユーザーのIPアドレスなどの情報もマスクされる。