物議を醸したデビアスの合成ダイヤモンドまたはラボグロウンダイヤモンド(人工的に「研究所で生成された」ダイヤモンドという意味)を製造・販売するという決定は、同社がこれまで馴染みがなかった低価格宝飾品ビジネスへの参入を図る試みだった。
大衆に人工の宝石を販売するという機会に誘惑されたデビアスには、品質と価格の両面で泥沼の競争に巻き込まれるというリスクが常にあった。
そして、まさにそのリスクが現実となったように思われる。ダイヤモンドの製造技術が簡単に利用できるようになるにつれて、デビアスのラボグロウンダイヤモンド部門であるLightbox(ライトボックス)は、主に中国やインドで作られるようになった低コストの製品との競合から、さらなる値下げを余儀なくされた。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場したタイムマシンの自動車「デロリアン(DeLorean)」と「デビアス(De Beers)」をかけるわけではないが、デビアスは目の肥えた富裕層の限定された顧客に、高価格で最高級の宝石を提供するという、過去と非常によく似た「未来へ回帰」することを計画している。
デビアスのアル・クックCEO(最高経営責任者)は先日、「ラボグロウンダイヤモンドの在庫は、約1年と予想される期間の販売を継続できる量を保有している。その後、ライトボックスをどうするかという決定を下す予定だ」と、ブルームバーグのニュースサービスに語った。
「私たちはやり方を知っている。そして戻ってくる」と、クックはブルームバーグに語っている。
「これはすべて、天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの差別化という大きなテーマの下に集約される」。
クックは、デビアスの「バック・トゥ・ザ・フューチャー(未来への回帰)」の動きが、BHPによる買収提案が始まる前から計画されていたのか、それともデビアスの売却を含むアングロ・アメリカンの防衛策が、ダイヤモンド事業の大規模な改革の引き金となったのか、ということについては語らなかった。