経営・戦略

2024.06.07 14:00

デビアスが「合成ダイヤモンド」から撤退する理由

利益率が低いラボグロウンダイヤモンド

合成ダイヤモンドから撤退を決めた理由が何であれ、ラボグロウンダイヤモンドの価格が暴落し、利益率の低い事業になっているのが現実だ。

投資家がBHPの複雑な株式交換買収計画のニュースについて考えを巡らせていた5月上旬、デビアスはライトボックス・ブランドで販売するラボグロウンダイヤモンドの価格を大幅に引き下げ、1カラットあたり800ドル(約12万5000円)から500ドル(約7万8000円)へ恒久的に値下げすると発表した

デビアス・ブランドのサンドリーヌ・コンセイエCEOは5月10日、「小売店における天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの価格差は急速に拡がっており、両者が根本的に全く異なる製品であるという消費者の認識が加速している」と声明で述べた。

このコメントは、デビアスを傘下に収めるアングロ・アメリカンの経営権をめぐる買収合戦の真っ最中に発せられたものであり、合成ダイヤモンドからの撤退をうかがわせる最初の兆候であったのかもしれない。

この利益率の低い事業からの撤退は、アングロ・アメリカンのダンカン・ワンブラッドCEOが、同社の事業を銅、鉄鉱石、肥料の原料となる鉱物に集中する計画の一環として、売却する事業部門にデビアスを含めたとき、さらに推し進められることになった。

2018年にデビアスがライトボックスを意気揚々と立ち上げたのは、合成ダイヤモンドが同社の未来の一部になると見なされたからだ。そうならずにどうなったのかを説明することが目下の課題だ。

よく言えば、デビアスはダイヤモンド業界を高級品と低級品に分断する役割を果たしたということだ。これは、宝石ビジネスにおけるトップエンドの管理者としての信用を宣伝する機会を作ったと言えるかもしれない。

悪く言えば、デビアスは市場の廉価品に手を出して、顧客とデビアス自身を混乱させた。そして現在は業界におけるトップエンドの独占的なプレーヤーとして復活することを望んでいる。

生意気な部外者は、クックの計画について、ダイヤモンドをちりばめたデロリアンに乗って「未来への回帰(バック・トゥ・ザ・フューチャー)」の旅に出ようとしていると揶揄するかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事