宇宙

2024.05.29 19:00

ペルセウス座銀河団に1.5兆個の「迷子星」、ユークリッド宇宙望遠鏡の最新観測結果

ユークリッド宇宙望遠鏡が捉えた、迷子星から発せられる淡く柔らかな青色光に包まれているペルセウス座銀河団。迷子星は銀河団全体に散開しており、中心から最大200万光年の距離まで広がっている(ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by M. Montes (IAC) and J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay))

ユークリッド宇宙望遠鏡が捉えた、迷子星から発せられる淡く柔らかな青色光に包まれているペルセウス座銀河団。迷子星は銀河団全体に散開しており、中心から最大200万光年の距離まで広がっている(ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by M. Montes (IAC) and J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay))

夜空は変わりゆくものだ。欧州宇宙機関(ESA)のユークリッド宇宙望遠鏡が撮影した最新の画像が23日に公開されたのに伴い、初期公開の観測データに基づく興味深い新発見を報告する学術論文も同時に発表された。

その中で恐らく最も目覚ましい発見は、1兆5000億個以上もの「迷子星(銀河間星)」だろう。迷子星は銀河の外にあり、宇宙をさまよっているように見える。恒星は生来、銀河の内部で形成されるもので、宇宙空間で単独で形成されるものではないため、これは奇妙なことだ。

最大級の天体

迷子星は、1000個以上の銀河が属する「ペルセウス座銀河団」全体に散在している状態で発見された。同銀河団は、宇宙で最大級の天体で、ペルセウス座の方向に太陽系から約2億4000万光年の距離にある。

2023年7月にスペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられたユークリッド宇宙望遠鏡が、初めて実施した観測の1つであるペルセウス座銀河団の観測では、銀河間を漂う孤立した迷子星から発せられる、かすかな淡い光を検出した。

今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者の1人、独マックス・プランク地球外物理学研究所のマティアス・クルーゲは「広範囲に広がったこの光は、地上から見える最も暗い夜空の10万分の1以下の明るさしかない」と説明している。「だが、非常に広大な範囲にわたって広がっているため、全てが積算されると、銀河団全体の光度の約20%を占める」

銀河の吸収・合体

青みがかった色で、密集しているように見えるこれらの迷子星は、大型銀河の外縁部や、より小型の矮小銀河から弾き出されたと、天文学者らは考えている。迷子星は軌道運動をしているが、軌道の中心は、銀河団内にある最大の銀河ではなく、銀河団の最も明るい2つの銀河の間の点のように見える。

これは、ペルセウス座銀河団が最近、別の銀河の集団と合体した可能性があることを意味しているのかもしれないと、今回の研究に参加した英ノッティンガム大学の天文学者ジェシー・ゴールデン・マルクスは指摘している。「この最近の合体によって生じた重力的な擾乱により、銀河団で最大規模の銀河か迷子星群のどちらかかが予想される軌道から外れたことで、観測されるずれが生じているのかもしれない」と、ゴールデン・マルクスは説明している。

ユークリッド宇宙望遠鏡が捉えた、ペルセウス座銀河団に属する約1000個の銀河と、その背景にある多数の遠方の銀河(ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)

ユークリッド宇宙望遠鏡が捉えた、ペルセウス座銀河団に属する約1000個の銀河と、その背景にある多数の遠方の銀河(ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)

ユークリッド宇宙望遠鏡の独自の特徴

ユークリッドの口径1.2mの望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡と同等の画質の画像を撮影でき、観測視野がハッブルの175倍も広い。

宇宙の進化の探究、暗黒物質(ダークマター)の研究、恒星を公転していない自由浮遊惑星の探索などを目的とする探査計画の一環として、全天の約3分の1をカバーする、比類のない高精度の地図を作成する予定だ。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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