経営・戦略

2024.06.06 08:00

AIによる「企業スパイ活動」が拡大、自社の財産をどう守るか

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企業間の熾烈な競争の世界で、営業秘密は企業に競争力を与える秘宝だ。コカ・コーラのレシピからグーグルの検索アルゴリズムまで、それらの秘密は厳重に守られている。しかし、AIの到来によって、こうした企業の宝の神聖さは危機に晒されている。複雑なパターンやデータセットを分析、学習、および解読するAIの能力は、企業スパイや営業秘密の不正な解読というパンドラの箱を開いたのだ。

企業スパイ活動におけるAIの脅威が拡大

企業スパイ活動におけるAIの役割は著しく重要になり大きな懸念となっている。膨大なデータをふるいにかけることで、AIは隠された関係を暴き、プロセスを推論し、かつて安全と考えられていた製品のリバースエンジニアさえ行うことができる。この能力は、企業に財政的なリスクをもたらすだけでなく、法的、倫理的に深刻な問題を引き起こす。スパイ事象、特にAIが関わるものに関してほとんどの企業は固く口を閉ざしているが、いくつかの事例が紙面を賑わした。たとえば、競争の激しい製薬業界において、グラクソ・スミスクラインなどの会社が営業秘密の窃盗被害にあったが、事件におけるAIの使用については公に報告されていない。それでもなお、テクノロジー分野では知的財産の窃盗が蔓延しており、ウーバーやウェイモ(グーグルの自動運転車プロジェクト)などの会社が、営業秘密の窃盗の疑いを巡って法廷闘争に巻き込まれている。こうした紛争におけるAIの直接的役割は必ずしも明らかにされていないが、独自のアルゴリズムやプロセスを分析、複製するAI技術の能力は、主要な問題となっている。

AIはどうやって営業秘密を解読するのか

AIが営業秘密を解読する能力は、AIの中核機能であるデータ分析、パターン認識、および機械学習にかかっている。公開されているデータや、少々危うい方法で入手したデータを使ってAIシステムを学習させることで、システムは製品やプロセスの基本的原理を識別できるようになる。こうして、人間には不可能な規模とスピードでデータを処理・分析するAIの能力を人々は悪用しているのだ。これには、 特許データベース、科学出版物、さらにはSNSをも徹底的に調べ、ライバルの営業秘密に関係している可能性のある情報を収集する行為も含まれている。

パターン認識とリバースエンジニアリング

AIはパターンを認識して一見無関係のデータポイント間のつながりを発見する能力に優れている。悪人たちは製品やプロセスをリバースエンジニアするためにこの能力を悪用する。特定の営業秘密の「シグニチャー」を理解することで、AIはそれを作り出すために使われた方法や製法を再現する手助けをすることができる。同様に、AIの予測能力は、競争相手の製品開発計画を予想するために利用される。市場データ、調査報告書、特許出願資料などを分析することで、AIは競争相手が手がけているものについて根拠ある推測を行うことが可能になり、市場に出る前に営業秘密を発見できる可能性すらある。

法的、倫理的な戦場

AIを使って営業秘密を解読する行為は、競合情報の分析と企業スパイ行為との境界線上にある。法的に営業秘密の窃盗は重罪であり、たとえば米国のDefend Trade Secrets Act(営業秘密保護法)は厳しい罰則を規定している。しかし、その法的枠組みはAIの技術進歩のペースに追いつくことに悪戦苦闘している。
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翻訳=高橋信夫

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