経営・戦略

2024.06.03 12:00

企業に増える「最高AI責任者」 業務内容と報酬は

Shutterstock.com

企業の間で、人工知能(AI)に関する取り組みを指揮する役職として「最高AI責任者(CAIO)」を任命する動きが急速に広まりつつある。LinkedIn(リンクトイン)によると2022年12月以降、AI関連業務の統括職を新設した企業は13%増えた

また、経営幹部を企業に紹介するエグゼクティブサーチ大手の米ハイドリック&ストラグルズの調査によると、AI部門トップの65%が現職の在任期間は5年未満と回答している。回答者が統括する業務はデータサイエンスやエンジニアリング、機械学習などさまざまだ。

CAIO職の存在は、各種業界でAIが極めて重要な存在と化していることを示しているだけでなく、企業がAI戦略の最適化と社内でのイノベーションの育成に注力していることをうかがわせる。そしてCAIOを置く傾向は、企業の全体的な事業戦略へのAI技術の統合が進んでいることを示しており、AIが事業運営上、重要な役割を果たしていることを明確にしている。

GEヘルスケアやユナイテッドヘルス・グループ、デロイト、メイヨー・クリニック、デル・テクノロジーズ、インテル・コーポレーション、IBMオートメーションなど、各分野の名だたる企業がCAIOを置いている。

CAIOの給与

企業はこぞって生成AIをはじめテクノロジーを活用したイノベーションを採用しており、CAIOはその戦略と実行においてかつてなく重要な存在となりつつある。報酬パッケージにもその職務の重要性が反映されている。

ハイドリック&ストラグルズの調査で、米国におけるデータ分析・AI部門トップの2023年の平均報酬総額は株式付与(年換算)を含めて113万4000ドル(約1億7800万円)だったことが明らかになった。最も高い報酬は260万ドル(約4億円)に上った。

基本報酬は金融サービス業界が最も高く、報酬総額は付与される株式や長期インセンティブの増加によりテック業界が最も高かった。

CAIOの役割

CAIOは社内のAIの統合と活用の戦略的方向性を定める上で重要な役割を担っている。AI関連事業のロードマップを策定し、AIに関する計画を事業目標と整合させ、その取り組みを会社の全体的な戦略目標に貢献するものにする。さらに、AI関連事業の計画と実行を監督し、組織のビジョンと使命との整合性を担保する責任を負う。

部門間連携

CAIOのもう一つの重要な責務は、研究開発やエンジニアリング、マーケティング、データサイエンスなど各部門と密接に連携することで、部門横断的なコラボレーションを促すことだ。こうした協働を通じて、さまざまな部署でAIを生かせる機会を特定し、知識の共有を促進し、AIソリューションを組織の多様な領域に統合することを目指す。また、AI主導のイノベーションと知識普及のカルチャーを推進する上で、CAIOは極めて重要な役割を果たす。
次ページ > まだあるCAIOのさまざまな役割

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事