例えば、実際より時間が長く感じられるような高負荷の運動については、短時間だけフィットネスのルーティンに組み込むことで、時間の長さを感じずに、長時間のエクササイズの利益を得ることが可能になるかもしれない。
加えて研究チームは、エクササイズの最中に時間感覚が変わる過程を解明することで、体を動かす活動をより楽しめるようにするための、新たな戦略を策定するのにも役立つ可能性があると示唆している。これには、エクササイズの習慣を長続きさせる効能も期待できる。
「この研究の主眼は、運動に取り組むよう人々を動機づけし、『時間が進むのが遅く感じられる』というマイナスのイメージを、回避あるいは緩和する方法を調査する点にある。時間の流れが遅くなる感覚を、うまく活用することもできるかもしれない」と、エドワーズ教授は述べている。
とはいえ、この研究結果には限界があることも、研究チームは強調している。第一に、実験の参加者はみな、健康状態が非常によく、もともと定期的に運動する習慣があった。そのため、そこまで健康ではなく、定期的に運動していない人に関して、同じ結果が出るとは断言できない。
「この研究結果が広く一般に当てはまるかは、まだわからない。33人というサンプルの大きさから言っても、『人間の時間感覚が変化する様子を垣間見る機会が、初めて得られた』というところだろう。また、エクササイズをしているあいだに、さらなるレベルアップを図るための手がかりも得られたかもしれない」とエドワーズ教授は語った。
研究チームでは今後、調査の範囲をさらに拡大し、より多様な参加者を対象とするほか、社会的な属性や健康レベルが違うさまざまな人たちが、エクササイズ中にどのような時間感覚のゆがみを感じるのかを調べたいとしている。
同チームではまた、今回の実験で用いられたサイクリングだけでなく、さまざまなタイプの体を動かす活動が時間感覚に与える影響についても、研究する計画を立てている。
さらに、例えばトレーニングを最適化したいと考えるアスリートや、リハビリ中の人など、特定の状況下にある人に、今回の研究成果を応用する方法についても研究する計画を立てている。こうした人は、「より夢中になれるエクササイズ体験」からメリットを得られるはずだ。
(forbes.com 原文)