宇宙

2024.05.26 13:00

米大学チームが開発した「世界初の超小型月面ローバー」の実力

300人の学生チームが数十万時間をかけて開発したアイリスは、着陸船のプロペラント(推進剤)漏れという不運に見舞われ、月面に着陸して探査を行うことは叶わなかった。しかし、興味深いことに、チームは偏心軌道にあるアイリスと通信し、データの送信やコマンドの実行をしてレスポンスを得ることができたという。

将来の月探査を支える技術

その理由の1つは、アイリスが月着陸船の中にはなく、外側にボルトで固定されていたことだ。このことから、チームは真空の中で、太陽風や宇宙線に晒された中でも搭載システムが正常に作動することを確認できたのだ。学生主導のチームが開発しただけに、アイリスは安価な部品を使って作られており、耐放射線強化処理がされていなかった。このため、過酷な環境に耐え続けることは最初から想定されていなかった。

このことは、非常に重要な発見だ。なぜならば、将来の月探査は小型で安価なロボット・ローバーによる探査に依存しているからだ。アイリスの開発チームメンバーであるカーミン・タレントによると、今回の成果によって宇宙探査の機会が広がるだけでなく、将来的には定住も可能になるかもしれないという。

「近い将来、月面基地や火星基地ができるだろう。これらの基地は、ガソリンスタンドのような機能を果たすようになると思う。もし、我々がそれを実現する技術を開発し、他の惑星の資源を利用することができるようになれば、月や火星を拠点として太陽系や宇宙の他のエリアによりアクセスしやすくなる」とタレントは話す。

現在は月の氷を探査するMoon Ranger(ムーンレンジャー)をはじめ、他のローバーの開発を続けているタレントは、「今回得られた教訓は、将来実を結ぶだろう」と語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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