「人生で一番大切なのはお金じゃない。仏教にはカルマ(宿命)があって、人に良いものを与えると、良いものが返ってくると教わります。だから我々も利益の最大化より、ゲストのためにより良い環境や食事を考えたいと思っています」
レストランの食器やカトラリー、花のデコレーションなどもGMであるTeaが自ら行っている。コロナ禍でビジネスが圧迫され、優秀なマネージャーを雇うことが難しくなったことで、やむなく自らがGMに就いているというが、それが他にない独自の美と競争力を作り出している。「アドバイスや提案をくれる友人たちもいます。 驚いたことに彼らも皆、瞑想のコースで知り合った仲間なんですよ」。
瞑想コース参加は勤務扱い
ホテル予約プラットフォームの高評価について、Teaは「それ自体はとても光栄なことですが」としつつ、それを維持する大変さも明かす。「うちはプール付きの部屋が多く、メンテナンスも大変だし、変わり映えしなければ飽きられてしまう。だからレストランメニューやプレゼンテーションを数カ月に一度は変えたり、食器も入れ替えています」
そうした努力の甲斐もあって、リゾートは高い稼働率を誇り、週末は満室になる。ヨーロッパや中国、韓国の海外客や、タイの政治家や俳優などのセレブリティも、インサイド・ハウスに多く足を運んでいる。今年に入って新設したスパには、今後日本風の温泉を作る予定だ。さらに瞑想ホールの建設も考えている。
瞑想に励んでいるのはTeaだけではない。インサイド・ハウスでは、従業員も瞑想コースに参加しているというのが印象的だった。その時間は、勤務日としてカウントされているという。
「社員50人ほどのうち、半数以上が瞑想コースを受講しています。2泊3日のコースと7泊8日の集中コースがあり、10人以上が集中コースの方に参加しています」
リゾート創設のストーリーやコンセプトが浸透していると、社員が強要されることなく、自らそれに即した行動を起こす。インサイド・ハウスはブランディング的にも、理想的な社員教育のモデルに映る。
この先Teaが取り組みたいのは、チェンマイにプール付きのウェルネス分譲住宅を建てることだ。
「従来のレジデンスとは異なる空間、アート、デザインのセンスが備わったもの。健康で平穏な生活を送ることに主眼を置いているので、それが可能な暮らしの場をつくりたい。実現のためにもできるだけ瞑想のコースに通って、自分自身や他人、自然を本当の意味で理解したい。そして真に幸せで、自由でありたいと思っています」
日本からは関西からの直行便が週に4便就航するようになったチェンマイ。幸せを見つめ直せるリトリートは、そう遠くはない。