2024.06.01 09:15

オーナーは敬虔な仏教徒 チェンマイのリゾートのセンスに驚く

瞑想コースを受けるようになって何度目かのこと。師匠から「チェンマイにホテルを持つべきだ」と助言を受けた。タイの僧侶の多くは、マーベル映画のヒーローのように未来を予見したり、隠されたものを見出す「スーパーナチュラル」と呼ばれる力を持っているのだという。

当時は家業のホテル経営で手一杯だと考えていたTeaだったが、毎年瞑想コースを受けるなかで、師匠の予言を信じるようになった。同時期、チェンマイにホテルをオープンする友人にコンサルティングを依頼されてマーケットリサーチをしたことで、市場の様子が掴めた。さらに臨時の収入もあり、僧侶の予言は現実となる。

「ホテルの開業を勧めてくれた僧侶と、依頼をくれた友人やこの土地との出会い。すべてが運命的でした。ブッダが悟りを開いたとされる菩提樹が伸びるこの地を引き継げたことは本当に光栄なこと。建築家と私は、この木を主役に、建物をその脇役として配置する設計にしました。このホテルを通して『​​幸せは内面から来る』という仏教の思想を伝えたいのです」

菩提樹の麓に立つオーナーのTea(ティー)菩提樹の麓に立つオーナーのTea(ティー)

そのミッション達成のために今も瞑想を続け、「なぜ生まれてきたのか。この人生で何をすべきなのか。真の幸せとは何か」を見つめ直しているのだという。

「幸せはお金では買えません。お金や家族や恋人、夫や息子など、他に幸せを求めてはいけない。私たちは時に、他に頼りすぎています。自分の内面から湧き出た幸せは、長く続くでしょう。本当の幸せは、私たちが健康で良い人生を送るためにとても大切なものです」

とても心に響く言葉だが、リゾートがあまりにオシャレすぎて、ゲストは“映える写真”を撮るのに躍起となり、そのメッセージを受け取れていないのが現実だ。だからリゾートの壁面に歩行瞑想の彫刻を施したり、「Happiness comes from Inside」と書かれたメッセージカードを置いたりして、「幸せは内側からやってくる」ことを少しでも客が感じられるよう仕掛けている。

旅がインスピレーション源

真の幸せを追求するTeaの哲学は、建築、内装、テーブルサービスなどにも及ぶ。旅が趣味という彼は、世界各地での体験や美味しいものを融合させて、独自の夢見心地な世界を演出する。特にイタリアや日本が好きで、リゾートの設計にはヴェニスの街並みとランナー・コロニアルを融合させたという。

「父のお気に入りだったコロニアルスタイルに、ベネチアン・スタイルを加えたのがインサイドハウスのスタイル。ベネチアはとてもユニークで、建物がとても美しい。アマン・ヴェニスがお気に入りのホテルで、建築家にはランナー・コロニアルにベネチアン・スタイルの美しさを加えたいと依頼しました」
次ページ > 社員も自ら瞑想に励む

文・写真=山田理絵

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事