欧州

2024.05.10 10:00

脱石炭を決めたポーランド、失業する炭鉱労働者はどこへ行くのか

ポーランド南部シレジア地方オシフィエンチムにある石炭貯蔵会社(Beata Zawrzel/NurPhoto via Getty Images)

シレジア地方の炭鉱労働者が他の産業に公正に移行できるようにするためには、再教育や技能向上に取り組んでいく必要がある。こうした取り組みの主な焦点は、50歳未満で採掘経験15年程度といった、労働力の大半を占める若手炭鉱労働者だろう。自動車製造や鉄鋼生産、ITサービスといった成長産業の要求に見合った再教育を施すことで、労働者は高い成長が見込まれる業界で高賃金の職を得ることができる。ポーランド国内の平均を上回る粗付加価値を誇るシレジア地方の高度に工業化された経済では、雇用の創出も十分に見込めるだろう。だが、炭鉱労働者を労働市場に引き留めようとするこれまでの努力は、限られた成功しか収めていない。率直に言えば、過去の政策では労働市場にとどまるより、離職する方が魅力的だったのだ。
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エネルギー効率や再生可能エネルギー関連の仕事など、一般に「グリーンジョブ」と呼ばれる新たなエネルギー分野の開拓は、雇用機会を創出するもう1つの道を示している。ポーランド中部に位置するベウハトゥフ炭鉱に関する報告書では、グリーンジョブの潜在的な可能性が強調されている。同国がEUの「公正な移行地域計画」の資金を活用すれば、同地域で現在炭鉱業に従事している労働者数の6倍の雇用を創出できる可能性があるという。

他方で、太陽光発電や風力発電の仕事は、炭鉱労働者にはそれほど人気がないことに留意しなければならない。太陽光や風力発電の雇用に向けた職業訓練が提供されているにもかかわらず、こうした分野を現実的な転職先と考えているのは、ポーランドの炭鉱労働者のわずか10%程度に過ぎないのだ。仕事の性質や給与の低さのほか、グリーン産業が伝統的な仕事に「取って代わる」という認識が障害となっているようだ。米国の炭鉱労働者への聞き取り調査でも同様に、再生可能エネルギー業界の賃金が低いことや、一過性の流行に過ぎないという不安が明らかになった。こうした背景から、地熱発電や原子力発電など、太陽光や風力以外の技術職を検討することが有望になるだろう。

一方、定年間近の高齢労働者には、別の方法が必要かもしれない。炭鉱の清掃に従事する機会や段階的な退職計画を提供することは、年金受給年齢に達するまでの期間を埋めるのに役立つだろう。こうした措置は労働者を経済的に支援するだけでなく、炭鉱を安全に閉鎖する上で、労働者の専門知識を活用することにもなる。
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シレジア地方がこの転換期を乗り超えていく過程で、地方を特徴づける主要産業を見直し、グリーン産業化の好例として浮上する機会も生まれる。地熱や原子力といった再生可能エネルギーへの投資や、エネルギー効率化に向けた取り組みを推進することで、同地方はポーランドの化石燃料からの脱却に貢献しつつ、新たな雇用機会を創出することができる。シレジア地方の高度な教育を受けた労働力は、この変革に対処していくことができるだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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