原子力は石炭に代わる将来有望な選択肢

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過去15年間にわたって、米国は石炭火力発電からの脱却を進めてきた。この移行は、環境規制や天然ガスの普及、再生可能エネルギーのコスト低下など、複数の要因によって加速している。

石炭火力発電所の閉鎖にともない、信頼性が高く、価格の手頃な二酸化炭素を排出しない代替発電所が必要とされている。これまで、石炭の代替となってきたのは天然ガスだった。だが、天然ガスは石炭より環境に優しいとはいえ、化石燃料であることには変わらず、温室効果ガスを排出する。

風力発電や太陽光発電のような再生可能エネルギーは急速に拡大しているものの、石炭火力発電を代替する上では複数の課題がある。まず、再生可能エネルギーの電源は分散型になりがちで、発電のためには広大な敷地が必要となる。さらに、再生可能エネルギーの電源は間欠的であるため、石炭火力発電所と同等の能力を代替するためには、より多くの定格容量が必要となる。確かに再生可能エネルギーは今後も重要性を増していくだろうが、短期的には間欠的な同電源が石炭火力発電を置き換えることは期待できない。

ここで、原子力発電がこうした需要を満たすための現実的な選択肢となる。原子力は送電網にベースロード電力を供給できる、環境に優しいエネルギー源なのだ。

米エネルギー省は昨年「閉鎖される石炭火力発電所を原子力発電所に置き換える上での利点と課題に関する調査」と題する報告書を公表した。これによると、米国内の閉鎖後または稼働中の石炭火力発電所用地の約80%が、ギガワット規模未満の先進的な原子炉の建設に適していると推定されている。

報告書の共同執筆者は、石炭火力発電所を原子力発電所に転換することで、コスト削減と炭素排出削減につながるとしている。発電所の所有者は、耐用年数中に最大10億ドル(約1400億円)を節約でき、炭素排出量を最大90%削減できるのだ。

国際エネルギー機関(IEA)は昨年11月、石炭火力発電の代替可能性に関する「ネットゼロへの移行における石炭」と題する報告書を発表した。同報告書は、世界的なエネルギー転換の中での石炭の役割を検証し、石炭関連の炭素排出量を迅速、安全、かつ人間中心の方法で削減するための戦略を明らかにしている。

これによると、石炭はエネルギー関連の二酸化炭素の最大の排出源であり、2021年には150億トンの炭素を排出した。他方で石炭は最大の発電源でもあり、2021年には36%を占めていた。
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翻訳・編集=安藤清香

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