第4世代原子炉で大きな前進 従来の原子炉とは何が違うのか?

テレストリアルエナジーのIMSR400原子力発電所(Terrestrial Energy Inc.)

国際エネルギー機関(IEA)は2019年「環境に優しいエネルギーシステムにおける原子力」と題する報告書を発表し、世界がエネルギーの脱炭素化を目指す中、原子力の重要性を強調した。その中で、同機関は「先進国にとって、原子力は30年以上にわたって最大の低炭素電力源であり続け、複数の国でエネルギー供給の安全保障に重要な役割を果たしてきた。しかし、先進国では老朽化した設備を段階的に廃止する政策の面だけでなく、市場の動向や規制の壁といった圧力を受けて廃炉に踏み切ることもあるため、原子力は現在、不確実な未来に直面している」と指摘した。

原子力発電は炭素排出量の少ない電力源として重要であるにもかかわらず、1986年のチェルノブイリや2011年の福島のような原子力発電所事故のリスクを理由に、段階的に廃止する国もある。そのようなリスクがあると一般市民が受け止めている限り、原子力発電は逆風にさらされることになる。だからこそ、過去に経験したような大規模な原子力事故に対する不安を払拭するような技術開発に焦点を当てることが重要だ。

進化し続ける原子力技術

1950~60年代にかけて建設された第1世代の原子炉は、軽水炉の技術に基づいていた。この世代の原子炉は、冷却材と中性子の減速材に水を使用し、濃縮ウランを燃料としていた。

1970~80年代にかけて開発された第2世代の原子炉は、第1世代の設計を改良したものだが、冷却材に水を使い、燃料に濃縮ウランを必要とすることに変わりはなかった。

1990~2000年代にかけて導入が始まった第3世代の原子炉は、受動的安全機能をはじめとする設計上の改良が施されているが、依然として冷却材に水を使用している。

第4世代原子炉とは、過去の世代の原子炉より安全で効率的、かつ持続可能となるように設計された最先端の原子炉を指す。先進的な材料や設計、冷却システムを取り入れており、既存の原子力技術よりも経済的で柔軟性があり、さまざまな規模に対応できることが特徴だ。

第4世代原子炉はこれまでの原子炉と比較して、複数の点で優れている。まず、事故や故障の際に放射性物質の放出を防ぐ安全機能が備わっているため、安全性が高い。第2に、核燃料から電力への変換率が高く効率が良い。第3に廃棄物の発生が少なく、核廃棄物を燃料として利用できるなど持続可能性がある。さらに、遠隔地や小規模発電網など、さまざまな用途や環境で使用でき、柔軟性と拡張性に優れている。
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翻訳・編集=安藤清香

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