地域を変革するキーマンである「スモール・ジャイアンツ イノベーター」の対談企画として、岡崎ビジネスサポートセンター・オカビズで公開インタビューを行った。
10周年を迎えたオカビズの初代センター長で事業創出家の秋元祥治と、老舗の中小企業でありながら自律型組織として注目される側島製罐(愛知県大治町)代表取締役で6代目の石川貴也に、ヒットを生み出す秘訣を聞いた。前編と後編に分けてご紹介する。
窮地でオカビズに相談 「ガンガン焼き」誕生秘話
──まず、石川さんから創業117年の側島製罐について紹介をお願いします。石川:名古屋からも近い愛知県大治町にある、社員数は約40人で売上高は7.8億円の規模の会社です。缶のなかでも特にお菓子や雑貨向けの「一般缶」の製造を手がけています。創業当初は缶屋ではなく、養蚕業の器具・蚕具作りから始まり、戦時中に缶パンが売れたことでブリキの缶製造に発展していきました。2000年以降は20年連続で売り上げが下がっており、下請け企業と薄利多売の事業からの脱却が急務でした。2020年4月にアトツギとして戻るとコロナ禍に突入し、苦しい時期にセンター長だった秋元さんに相談を持ちかけました。
「缶が1個100円なんですよ、 もう赤字なんです。なんとかしてください」と、右も左もわからず、ここにたどり着いたんです。
──その時のことを秋元さんは覚えていますか?
秋元:毎回、石川さんと数人の社員さんがお越しになったことを覚えています。「若君はこう言ってますが......」と他の皆さんはやや腰が引けたような雰囲気だったように思います。
──そこから「ガンガン焼き専用缶」が誕生した背景を教えていただけますか。
秋元:とにかくいわゆる下請けの仕事は、量は取れても利幅は少ないので、利益を生み出していくには直販で売れるような、粗利の大きい自社商品が必要だと考えました。一方で、財務も厳しい状況なのでお金をかけずに、リスクがほぼない状態で自社商品を生み出す必要がある。
そこで生み出したのが、ガンガン焼きでした。ヒットを狙うというよりは、ほぼリスクなくジャブを打つことで、次の商品に繋がっていくと考えていました。
石川:秋元さんは最初に、缶の蓋を開けて「ここに穴を開けられますよね」と言ってガンガン焼きのアイディアを授けてくれました。そして「1000円で売れますよ」と言ってくださり、チラシづくりにもアドバイスをいただきました。EC販売をしてますが、メガヒットではないけれど、特に冬には業者からもまとまった注文があるなど、コンスタントに売れています。
何より従来のtoB事業とは違い、自社商品開発のやり方を学ぶことができました。